57 / 127
三人で 《剣介》
会計をすませ、どうせならと小春も連れて家に戻った。
ケーキに合うようにと小春にはミルクティーを淹れてやって、俺と早苗はアイスを食べることにした。
なんかこう、女の子が部屋にいるのは違和感がすごかった。
「柳さんって、もっと怖い人なのかと思ってた」
そう言って小春はミルクティーに口を付けた。
「柳くんはとっても優しいし、良い人だよ」
俺が答えるより先に早苗が言った。
「顔はこえーだろ?」
「ちょっとね」
「うん、ちょっと」
兄妹で同じ事を言うから笑えた。
「お兄ちゃんより、お兄ちゃんって感じする」
「あー、ひどいなー。でも、柳くんほんとに面倒見いいし、二人も弟いるし僕よりずっとお兄ちゃんだよね」
「そりゃあんな手の掛かる悪ガキがいたらな。昔、妹欲しかったんだよな。手掛からなそうだしイメージ的に」
「小春はちっちゃいときおてんばで困ったけどねー?」
「そんなことないでしょ」
「僕がバッタ苦手だって言ったら、バッタもって追いかけ回してきたよ」
小さな早苗を追いかけ回す小さな小春。
想像して和やかな気持ちになる。
「そんなの覚えてませんー。柳さん、頂きますね」
「おぅ」
早苗も礼儀正しいが小春もそうなんだな。
いい兄妹だ。
律儀に俺に言って小春はチーズケーキを食べ始めた。
俺は二人の様子を眺めながら、アイスを一口サイズに割って口に含んだ。
仲が悪いのかと思っていたが、そんなこともないようで、楽しげに話ている。
「メールだ……」
ふとスマホを見た小春が苦虫を噛み潰したような顔をする。
彼氏からだろうか?
小春は浮かない表情でスマホと睨めっこしてる。
「ごめんってさ……ほんとムカつく」
怒りというよりも哀しい声で、小春はぼそっと呟いた。
ともだちにシェアしよう!