59 / 127

兄弟と兄妹 《早苗》

その後も三人で話していると、外から声がした。 「ただいまー。あ、早苗さんきてるの?」 あおくんの声がして、ばたばたと走ってくる。 そして、姿を現したと思ったら驚いて固まってしまう。 「さ、早苗さんが二人いる……!」 「いねぇよ」 「え? ど、ドッペルゲンガー?」 「よくんな単語知ってんな」 「じゃあ、えっとぉ……」 混乱してるあおくんに小春が微笑む。 僕もあおくんが可愛くて顔が綻ぶ。 「あれ、なに女の子連れ込んでんの」 あおくんの後ろからしゅんくんもやってきた。 こちらは割と冷静にコメントしてくる。 「つーか、小春じゃん。なに兄ちゃん、とうとう妹の方に手出してんの?」 「あほ。んなんじゃねぇよ」 「隼介ってほんとに柳さんの弟だったんだ」 「そうだよ。そっちこそ、やっぱ早苗さんの妹なんだね」 「えぇ?! 妹なの?」 同じ中学校なのもあり、しゅんくんと小春は知り合いらしい。 あおくんはというと妹ということにすごく驚いたみたい。 「それ以外何あんのさ」 「だってだって、あんな可愛い人みたことな……あ、いや」 言ってから照れて、あおくんはもじもじと視線を泳がせる。 小春は優しげに微笑んで、あおくんに手招きする。 俺? と言いたげに自分に指さして、赤くなりながらあおくんは小春の横に座った。 「こんにちは。私、小春です。あなたのお名前は?」 「ああ、あ、碧です! えっとこんにちはっ!」 「早苗の妹よ、ドッペルゲンガーじゃなくて。よろしくね」 「よろしく……小春、さん」 小春がにこっと笑う。 するとあおくんは顔を赤くして黙ってしまって、ずいぶんと照れているみたい。 「骨抜きにされてんね」 しゅんくんは面白がって笑い、あおくんの横に腰を下ろす。 「こんな可愛い弟いるの何で言わないのよ」 「いや、わざわざ可愛い弟いるよってブラコンかよ」 「かっこいいだし! かわいいは、こ、小春さんだし……」 しゅんくんとあおくんと小春はにぎやかに話してて、微笑ましい。 柳くんと目が合うと、彼も表情が柔らかくて同じ気持ちみたいだ。 みんなにばれないようにそっと手を伸ばして手を繋ぐと、柳くんも優しく握り返してくれた。

ともだちにシェアしよう!