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秘密会議 《早苗》

しばらくみんなで話していると、柳くんはご飯の準備にとキッチンに行ってしまった。 お手伝いに行きたいななんてちらっと柳くんを見てると、服をぐいっと引っ張られた。 引っ張ってきたのは、しゅんくんだった。 「どうしたの?」 と声をかけると、しーっと人差し指を口元に添えて静かにするようにと示される。 まるで柳くんに聞かれたくないみたいな。 「来週、兄ちゃんの誕生日でしょ?」 「あ、そういえばそうだね」 小声でひそひそと話す。 テストやらで意識してなかったけれど11月24日は柳くんの誕生日だ。 「柳さん誕生日なんだ?」 「24日だから水曜日。誕生日会してあげようって母さんが言い出して、する事になった 」 「ケーキも今日、注文してきたんだよ。隼介と二人で!」 誕生日会、か。 柳くん家はほんとにあったかいなって、思う。 心がぽかぽかしてくる。 「それで、よかったら早苗さんも一緒にどうかなって」 「いいの? なら、僕も準備手伝うよ」 誕生日には美味しいごはんとケーキ。 あと、プレゼント。 去年はデパートで見つけたお菓子をあげたんだっけ。 今年は柳くんと恋人になったんだから、もっとらしいプレゼントがしたいな。 何でだろう、柳くんのこと考えるのがこんなにも幸せだ。 「なー、かに玉と麻婆豆腐どっちがいい?」 ふとキッチンから柳くんの声がした。 ひそひそと話して音に敏感になってたからか、みんなびくっとしてしまった。 「かに玉」 「麻婆豆腐!」 しゅんくんとあおくんが言う。 見事に意見が割れた。 「じゃんけん、ぽん!」 「よっしゃ。かに玉で」 しゅんくんがじゃんけんに勝って、晩ご飯はかに玉になったようだ。 「ちぇー、かに玉より麻婆豆腐のが絶対ご飯にあうのに!」 「この間も麻婆豆腐だったじゃん」 「喧嘩すんじゃねぇぞ」 柳くんはそう言って、調理を始めたようだった。 意見が割れたらじゃんけんって、なんか可愛らしいな。 「隼介もわりとムキになるんだね」 小春に言われるとしゅんくんはちょっと赤くなる。 「そんなんじゃないけど」 「麻婆豆腐っ」 「しつこい」 僕も男兄弟がいたらこんな感じだったかなって想像するけど、あんまりイメージはつかない。 小春とも晩ご飯で、言い合ったりとかは無かったし。 「じゃあ、水曜日は5時前には家にいるから」 気を取り直して小声でしゅんくんが切り出す。 「いっぱいお祝いしてあげようね」 誕生日会にプレゼント。 柳くんが喜んでくれたらいいな、と彼の後ろ姿をちらっと見ながら思った。

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