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買い物 《早苗》

次の日。 土曜日だからかいつもより人が多くて、デパートも賑わっていた。 「なに買おうかなー」 取り敢えずでふらふらとお菓子なんかが売っているコーナーを眺める。 カラフルなマカロンやクリームたっぷりのロールケーキ。 柳くんも甘いもの好きだからいいかもなぁ。 ついでに一口貰いたい、なんて。 「プレゼントするなら形残るもののがいんじゃない? 食べ物もいいけどさ」 「そっか、そうだよね」 小春が呆れ気味に言う。 形が残るものか。 それなら普段から使えるものがいいよね。 エスカレーターで上の階に行ってはまたぶらぶらと見回った。 筆記用具は、柳くんそんなに頓着しない。 時計は持ってるし、エプロンは使わない人だ。 部活してるからタオルでもいいけど、もっと違うものがいい。 アクセサリーはつけないしな……。 歩き回ってもなかなかこれといったものは見つからなかった。 「ちょっと気分転換」 「しょうがないなー」 ちょうどいつも見にくる服や雑貨なんかもある店にさしかかり、そこを見ることにした。 好みの服が多くて好きなんだよね。 良い感じの冬物のニットがあるなーなんて見回りながら、マフラーのコーナーにきた。 僕が今つけてる水色や灰色のチェックのマフラーもここで買ったものだった。 お揃いってどうなんだろう。 まるっきり同じのは露骨だし恥ずかしい。 色違いもまだわかりやすすぎる。 デザインは違うけど同じブランドなら、そういう意味でお揃いでもぱっと見はわからないよね。 けど、柳くん嫌だったりするかな? 置いてあるマフラーを見ていると柳くんに似合いそうなものを見つけた。 黒っぽいグレーだけどツイードでおしゃれな感じ。 「マフラーにするの?」 「うん、持ってなかったと思うし。どうかな?」 「いいと思う。普段使い出来るし」 「じゃあ、これにしよっかな」 小春がいいと言ってくれたから安心した。 これにしよう。 お揃いなのは……恥ずかしいから秘密。 柳くん、喜んでくれたらいいなぁ。 昨日の寂しげな笑顔を思い出すと胸がちくりと痛む。 プレゼント渡して、それから僕の方から誘ってみようかな。 小さくため息をついて、レジに向かった。

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