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アドバイス 《早苗》

「柳さんってさ、お菓子もつくれるの?」 小春が野菜を切りながら聞いてくる。 「どうだろう。パンケーキなら作ってくれたことあるよ」 「ふーん。パンケーキかぁ」 この間から小春は柳くんのこと気になるみたい。 時々こうして質問してくる。 「なんか手伝う?」 「じゃあ、お湯沸かして」 手を動かしてないと色々考えてしまって、悲しくなってくる。 鍋に水を入れてコンロにかけて、そしたらまたする事もなくなった。 ぼーっと眺めながら小さくため息をつく。 「……電話でもしたら? そんな気になるならさ」 「電話?」 「うん、柳さんに。その濡れた子犬みたいな顔どうにかしてきたら」 「濡れた子犬の顔って?」 「寂しそうな顔ってこと。いいから、さっさとかけてきてよ。隣でうじうじされると気が散るの」 小春に押されてキッチンから出された。 電話、電話かぁ。 直接顔を見なくていいから少しは話しやすい気はした。 お菓子作ってたって話して、冷たくしたこと謝ろう……。 自分の部屋に入ると、ベッドに腰掛けてスマホをみる。 このまま気まずいのは嫌だし、早めに謝った方がいいって秋良ちゃんも言っていた。 よし、かけてみよう。

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