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上手に焼けました 《早苗》

オーブンをあけると甘い香りが広がった。 焦げてない。 上手に出来たかも。 焼き上がりをみていると小春が隣にやってきた。 「今度は焦げてないわね」 「ね。いい感じ」 「柳さんとも仲直りしたみたいだし?」 「楽しみにしてるよってさ。ありがと、小春」 「で、どっちから告白したの?」 「えっ?」 小春はすました顔で聞いてくる。 柳くんとそういう関係だってバレたのかと焦った。 「冗談よ。なに、ほんとなの?」 「いや、別に。その……うん」 ふっと小春は笑うけどこっちは気が気でない。 濁した返事を返す。 にやにやと笑ってるし、絶対バレてるよね……。 「明日祝日だし家に呼んでもいいのよ? ほら、おじゃまな私は夕方まで出かけようかなー?」 「そんな気を使わなくてもさ。別に小春いても……」 「お兄ちゃんはよくても柳さんはどうなのかなー。柳さん家だと弟もいてなにかと出来なさそうだしねぇ」 「何の話してるのさ?」 「ほんと男子高校生とは思えないわよね、お兄ちゃんって」 小春は呆れたように意地悪く笑う。 何の話なのかわからないけど、単純にバカにされてるのはわかる。 「家に呼ぶなら言ってよね、邪魔したくないから」 「う、うん……?」 いまいち腑に落ちないままの僕を残して、小春は料理しに戻る。 考えてみてもぱっと思いつくこともなくて、もやもやしたまま諦めて片づけを始めた。 そうこうしてるうちにお父さんもお母さんも帰ってきて、また作ってたのと呆れ気味に言われたのだった。

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