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寝る前に 《早苗》
ちまちまと柳くんと連絡をして、寝る前にやっと電話できた。
「それでね、小春すごい気を使っててね」
『思いっきりバレてるな……』
「やっぱり? にやにやしてた」
電話の向こうで柳くんがため息をつく。
『にしても、おめぇはほんっとに鈍いな』
「そう言われても、わからないものはわかんないよー。僕、変なのかな」
『変っつーか、まぁ……早苗はそれでいいけどよ』
ベッドに入って耳を傾ける。
柳くんの声は低くてかっこよくて、落ち着く。
「柳くんがそういうならいいや」
電話の向こうで笑う声が心地いい。
笑った顔を思い浮かべて僕まで笑顔になれる。
『な、やっぱさ、名前で呼んでみねぇ?』
「名前で? えっと……恥ずかしい」
『んー、そか。いいけどさ』
この間から名前で呼んでほしいらしい柳くん。
それって恋人になったからだよね、きっと。
寂しそうな声をされたら、言わずにはいられなくなってしまう。
「け、剣介……」
『なに? 早苗』
名前で呼んでみると、柳くんは嬉しそうに笑う。
囁くような声で僕の名前を呼ばれて顔が熱くなってきた。
なんというか、凄く甘い声。
名前を呼ばれただけなのに、どうしてこんなにドキドキするの。
「……好きだよ、けん、すけ」
『俺も』
「恥ずかしい……」
『可愛いな』
顔がにやけてしまう。
柳くんと話すのが一番幸せだなって、心の底から思う。
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