75 / 127
寝息 《剣介》
明日が祝日だからと弟達がテレビを見ていて助かった。
兄弟で同じ部屋だとこういう時困る。
絶対、顔にやけてるからな。
それに電話の相手が早苗だと分かれば、否が応でも電話したがるだろうし。
話していると早苗の声が次第にとろんとしてくる。
『それでね……ふぁ』
欠伸だ。
そういや寝不足だったよな、早苗のやつ。
俺のために。
ダメだ顔が最高潮に緩んでる。
「寝るか?」
『ううん、平気』
「声、すげぇ眠そうだぞ」
ふわふわして可愛い。
この声をすぐ近くで聞いていたとしたら、俺の理性はどこかに行ってしまいそうだ。
そのくらい口調や声が可愛らしい。
『んぅ……そんなこと、ないよ』
「寝てもいんだぞ?」
『ううん、いや……』
名残惜しそうな声。
寝るの嫌がるとか。
なんて、愛おしいんだろう。
「じゃあもうちょっとな?」
そう声をかけると、安心したように笑う声が聞こえた。
『けんすけ……』
「なんだよ?」
『んふふ……』
とろんとした声で俺の名前を呼んで、幸せそうに笑う。
どうしようもなく可愛い奴だ。
けど、次第に声が覚束なく寝言のようになっていく。
俺と話せるとわかって、ほっとしたとか?
安心しきった寝顔を間近で見たい。
腕枕して早苗の温もりを感じたい。
そんな妄想のような願望のような何かが膨らむ中、とうとう早苗の寝息が聞こえてきた。
「おやすみ、早苗……」
そっと声をかけると、んぅと返事をするような寝言。
盛大に顔がにやけつつ電話を切ると、俺も幸せな気持ちのまま目をつぶった。
ともだちにシェアしよう!