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11月24日-3 《剣介》
いつものように早苗と昼飯。
今日はそわそわしてるけど、寝不足でもなさそう。
弁当も俺の好きな豚の生姜焼き。
なんだかいい日だ。
「でさ、碧が小春さんいつくるかなってさ、うるせぇんだよ」
「そうなの? すっかり小春気に入っちゃったんだねぇ」
「な。隼介も呆れてる」
「また今度、連れていこうか。あ、ミートボール一個食べて?」
関係が変わった所で、することは変わらないなって思う。
ま、嬉しいからいいんだけどな。
差し出されるそれを食べる。
目があって、早苗の顔が赤くなった。
変わらないことも、ないか。
自分でやったあとに気づくから世話ねぇけど。
それでもバレてないと思ってるのか、何も言わずに箸を進めている。
かわいいやつだ、ほんとうに。
「顔真っ赤」
「もう、いわないでよー!」
からかうと早苗はぱたぱたと顔をあおぐ。
こうしてなんでもない時間を過ごせるのが本当に幸せだ。
「今までどうしてたのか、わかんなくなっちゃった」
「だな。いちいちまっかっかになって顔に出まくり」
そんな早苗が愛おしくて仕方ない。
顔に出るくらい俺を意識してくれてるってことだから。
「けど前より今がいいな」
「うん?」
「どきどきするけど今の方がもっと柳くんとちゃんと付き合えてるっていうか……うまく言えないけど」
なんとなく早苗の言わんとすることはわかった。
俺は今でずっと自分気持ちをセーブして誤魔化して早苗と話していた。
そうする必要がなくなった今のが、深く繋がれている気がする。
自然と顔がほころぶ。
早苗も目を細めて微笑む。
「今のがいいな」
「うん!」
今日はなんだかいい日だ。
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