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11月24日-4 《剣介》
掃除を終えて、教室へ向かって歩いているとドアから顔を出している奴がいた。
榎本だ。
目が合うと教室の中に消えていった。
なんだろうな?
人の多い廊下を歩いて行って教室に入る。
俺の机の周りには早苗と榎本と桜井。
そして、よくよくみると机の上が菓子でいっぱいになっていた。
「柳くん誕生日おめでとう!」
「おめでとー、柳くん!」
「柳、ハッピーバースデー!」
三人にそう言われ、そういえば今日は誕生日だったかと気づいた。
じゃあ机の上の菓子たちはプレゼントだろうか。
その様子を見ていたクラスメイトにもお祝いの言葉を貰いつつ席に向かった。
「わざわざわりぃな、ありがとう。つか、忘れてたわ」
「え、柳くん忘れてたの?」
「柳らしいね」
桜井と榎本に笑われた。
早苗はにこにこと微笑んで綺麗にラッピングされた袋を出した。
「僕からはこれ。上手に出来たよ?」
透明な袋の中にはクッキーが詰まっていた。
そうか、早苗も誕生日だからって作ってくれたのか。
なんだこれ、めちゃくちゃ嬉しい。
「ありがとう、早苗。食べてみてもいいか?」
「うんっ。どうぞ?」
「……ん、うまい。すげぇ美味しい」
「ほんと? よかったぁ」
サクサクでバターの香りも甘さも丁度いい。
シンプルだけど、すげぇ美味しい。
早苗が頑張って作ってくれたんだと思うと一層、うまく感じる。
ホッとしたような表情の早苗の頭をわしゃわしゃと撫でてやった。
「わぁ見てあのデレデレな顔」
「ね。柳もあんな笑えんだね」
「あぁ? なんだよ、見んなよ」
「そーだ、写真取ってあげるね!」
「それがいい。ほら二人くっついて」
冷やかされて顔が熱い。
それでも、気分はいいから撮られることにした。
こんな風に祝われるのは初めてかもな。
机いっぱいのお菓子とか恋人からの手作りクッキーとか。
こういうのも、悪くねぇな?
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