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11月24日-9 《剣介》

いつもより豪勢な晩飯を終えて、トランプで遊ぶことになった。 大富豪にババ抜き。 早苗はわかりやすくてババ抜きは苦手なようだった。 そんなこんな腹ごなしをしてケーキを食べることにした。 わざわざ蝋燭を17本も立てて部屋を暗くしてって、この年だと気恥ずかしい。 ゆらゆらと暗闇の中で揺れる蝋燭の火は、こんなに暖かいものだっただろうか。 ハッピーバースデーの歌を歌って貰い蝋燭を吹き消す。 改めておめでとうと言われ、ちょっと感動した。 「そっちのが大きくない?」 「いいんだよ、俺が誕生日だから」 「俺はそのイチゴ大きいやつで」 「隼介ずるい!」 碧のいちゃもんを聞き流しつつ大きめのをゲットした。 早苗に微笑ましげ見られて若干恥ずかしい。 というか案の定、口の端に僅かにクリームを残す早苗。 どうしたものか。 この間、指を舐められたのを思い出して気まずくなる。 いや、ここはもう意識せず自然にいったもの勝ちなんじゃなかろうか。 「早苗、ついてるぞ」 「え?」 こっちを見る早苗の口元のクリームをさっと拭って自分の口に運ぶ。 そしてなんでもなさそうな顔で笑ってみる。 「あ、ありがと……」 早苗は恥ずかしげに顔を赤くして笑い返してくる。 どうだろう自然に出来たのだろうか。 自分でした事だがドキドキしてしまって、味わうこと無くケーキを食べ終えてしまった。

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