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11月24日-10 《剣介》
プレゼントだと、お袋から財布を貰った。
ケチだからずっと同じの使ってるでしょなんて余計な一言と一緒に。
そして早苗からはマフラーまで貰ってしまった。
「クッキーあったから、これまであると思わなかった」
「サプライズできた?」
「あぁ。ありがとなっ」
嬉しそうに微笑む早苗。
愛らしくてふわりと頭を撫でる。
「そろそろ帰るか?」
「そうだねぇ。帰んなきゃ」
「送ってくし、早速使ってもいいか?」
「うんっ、つけてみて!」
シンプルな灰色のマフラー。
俺のために選んでくれたんだと思うと嬉しくてにやけてしまう。
「似合うねぇ、かっこいい」
「そうか? 早苗の見立てがよかったんだろうな」
「そうでしょ? なんて、ね」
早苗まで嬉しそうにしていた。
今までにないくらい幸せだ。
そのマフラーをつけて早苗と家をでた。
寒さは染みるけれど雪は降っていない。
いつもより遅い時間帯で人も歩いていないから、手を握ってみた。
二人きりにならないとなかなか触れ合えないのは、ほんの少しもどかしい。
「楽しかったね」
「まぁな」
「柳くんのお家やっぱり好きだな」
「騒がしいだろ?」
「賑やかで、あったかいよ」
「そうか?」
「あ、あと、柳くんいるしね」
俺と目が合うと、早苗はそう付け足す。
俺だって、早苗がいたからより幸せだった。
心のなかでそう返し、握った手を引き寄せ距離を詰める。
「おめでと、柳くん」
照れてるのか寒いからか頬を染めて早苗が笑う。
「あ、剣介……?」
わざわざ言い換えるのがかわいくて、見上げてくる早苗にキスをしていた。
「ありがとう、早苗」
誰に祝われるよりもこいつから祝われるのが一番うれしい。
うんと頷いた早苗の手を引いてまた歩きだす。
ずっと早苗とは友達だった。
こうして少しずつでも、友達から恋人になれているのだろうか?
関係が変わるのは怖いけれど、これは悪くない。
前より今のこの関係がいい。
これまでに無いほど満たされた誕生日だったと、何度も何度も感じる一日だった。
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