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喧嘩6 《龍太郎》
涼香ちゃんは何も言わずに、顔をしかめる。
そっと頬を撫でると目を逸らされた。
「涼香ちゃん?」
何かが変だ。
思い詰めて塞ぎ込んでいる。
声をかけても何も返してくれない。
どうしようもなくて抱きしめようとすると、何も言わず突き放された。
「悪い……、帰る」
ふっと顔を逸らされて、行き場を失った手を空中で握る。
なんでだろう。
言葉では言ってくれない。
だからこそいっそう距離を感じた。
「うん……えっと、送っていく?」
「……迎え呼ぶから、いい」
気まずい空気。
どうしてこうなったんだろう。
それはどうしたって涼香ちゃんを襲おうとした男たちが悪いんだろうけど。
守られるのは嫌?
俺、そんなに頼りないかな?
それとも他になにかあるのだろうか?
「ねぇ……何も言ってくれないとわかんないよ」
荷物を整理し始める涼香ちゃんの背中に声を掛ける。
一瞬こちらをむこうとして、結局振り向かずに彼は手を動かす。
何か言おうとしてるようにもとれる仕草だった。
けど、話してくれない……。
「わかんないよっ……涼香ちゃん」
服の裾を掴んで発した声は、嫌でも強くなってしまった。
それでも何も言ってくれない。
俺には心を開いてくれていると思っていた。
それでもまだ俺には言いにくいのだろうか。
悲しくてちょっと泣きたくなった。
「今は話したくない……」
そう言って、涼香ちゃんが部屋から出ていった。
追いかけることももうできない。
守りきれなかった不甲斐なさなのか、心を開いてくれないことへの寂しさからなのか、堪えきれずに涙が零れてきた。
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