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弱点 《涼香》

少し拗ねたようにも見える表情だった。 突然のキスに鼓動が早くなり混乱しているのもよそに、龍太郎はそんな顔で言葉を続ける。 「こうして押し倒されても嫌がんないで、油断しきってる涼香ちゃんをみるだけで、嬉しくなってるんだよ?」 「っ……な、なんでそんな、こと」 そりゃあ龍太郎以外にそんなことはさせない。 けど、そんな真面目な顔でいうことじゃない。 こっちが恥ずかしくなる。 自分がどれだけ龍太郎に心を許しているのか自覚させられる。 「だってね、絶対振り向いてくれないだろうなって思ってたから。涼香ちゃんってば普通に女の子にモテモテで、俺じゃあ釣り合わないし、男同士なわけだし」 「そんなの、俺だってお前と付き合うなんて思わなかったよ。今は……お前しかいないって思ってる。龍太郎じゃなきゃ……嫌だ」 つい口をついて言ってしまい顔も身体も火照ってきた。 心臓の鼓動がうるさいくらい速い。 恥ずかしくて手で顔を隠すと、龍太郎がため息をつくのが聞こえた。 「ねぇ」 「な、なに」 「それは、可愛すぎ」 低く呟くような声が耳に響く。 可愛いなんて言われるのは嫌だったのに。 いつの間にか、龍太郎に言われるとほんの少しだけ嬉しくなってしまう。 顔を覆う手を剥がされ唇が重ねられた。 今度は触れるだけじゃなく舌も入ってくる。 舌同士が触れ、優しく口の中を弄られると、次第に何も考えられなくなった。 ただ龍太郎でいっぱいにされる。 「涼香ちゃん、大好きだよ」 そう囁かれる言葉がじんわりと頭の中を巡る。 胸がいっぱいで、なにも返せない俺の額に龍太郎はキスを落とした。 瞼や頬、鼻先にも次々と優しい口付けが降ってくる。 唇だけでなく髪が触れるのもくすぐったい。 羞恥で目も開けずされるがままだ。 そうしてるうちに、ふいに耳を甘噛された。 「っ……こら」 他の部分にされるのとは違う感覚が押し寄せてきて、耳を手で抑えようとするとその手を取られる。 楽しそうにくすっと笑うのが聞こえた。 そして意地悪く耳に息を吹きかけてくる。 「ん……りゅ、たろ」 「耳、弱いよね?」 耳元で囁かれるとまた身体が反応してしまう。 やめてほしいのにやめてほしくない。 もどかしくてぎゅっと龍太郎の服を掴んだ。

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