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変態わんこ 《涼香》

龍太郎は意地悪だ。 そこが弱いと知っていながら耳たぶを舐め、その舌が首筋を撫で下ろしていく。 「や、ぁっ……ふ」 声が出そうになり口元を抑えた。 何度も首筋にキスを落とし、同時にシャツのボタンまでも外されていく。 唇の触れたところが熱い。 あくまでも優しい舌や唇の感触に翻弄されてしまう。 段々と下りていき鎖骨をなぞるように舐められた。 またそこにもキスするのだろうと思っていると、明らかに今までより強く吸い付かれた。 「んっ……こら、吸うな」 「だめぇ? これならいい?」 くすくす笑われ、今度はそこにねっとりと舌を這わせてくる。 これはこれで、だめだ。 ぞわぞわして変な気分になってしまう。 「舐めても、美味しくないぞ……っ」 「えー、おいしいよ」 「……なんか、犬みたいだ。いっぱい舐めて」 「くぅ~ん、なんてね」 にこっと笑ってる龍太郎の頭を撫でてみる。 気持ちよさげに目を細めてる姿は本当に犬を連想させる。 「ほんとに犬みたいだな」 「涼香ちゃんの犬になら、なりたいかも」 「それは……なんか違うだろ」 「そうかなぁ?」 「変態っぽい」 「わー、涼香ちゃんえっちー」 「なっ、お前が……そういうこと言うからだろ!」 「それはそれでありかもー」 龍太郎は楽しげに笑うと俺のベルトに手を掛けた。 「お、おい。こら!」 「こっちもたーっぷり、舐めてあげるね」 恥ずかしいセリフを恥ずかしげも無く龍太郎は言う。 ベルトを解かれチャックも躊躇いなく下ろされた。 そこに近づけられた顔を引き剥がそうと手を添え、無駄な足掻きをする。 ズボンを下ろされかけて慌てていると、唐突に部屋のドアが開いた。 「お兄ちゃんCDかえ……し」 こちらを見て唖然としている茉子と目があう。 ベッドに押し倒された俺は服も乱れ、龍太郎は俺の下半身に顔を寄せている。 流石に何をしようとしているか誤魔化せるわけもない……。 茉子は顔を真っ赤にして視線を彷徨わせ、慌てて部屋を出ていった。 「龍太郎……」 一気にぼんやりとしていた頭が冷静になる。 別の意味で泣きそうだ。 「CD、さっさと返さないから……」 「あー、うん、ごめん」 「鍵もしておけって……」 「今日はまだこういうことしないかなって、思ってて」 あははと誤魔化すように笑う龍太郎。 この間も同じことがあったのに、ほんと学習しないんだから。 文句の一つでも言ってやろうかと考えていると、龍太郎は悪びれることもなく反応しかかけているそこを撫でてくる。 「ね、ごめんね?」 「あっ、す、ストップ……っ」 「けどここ、硬くなってるよ」 直接的な刺激にたまらなくなる。 ほんとは説教のひとつでもしたいのに、こうなったらもうどうしようもない。 龍太郎のペースに飲まれてしまうだけだ。 そうして、またいい雰囲気になりかけていると、ドアをノックする音がして引き戻された。 「邪魔して、ごめんね! お風呂入ってってママが」 ドアの外から茉子の声。 微妙な状態で手の動きを止められるのも辛いが、恥ずかしくてしょうがない。 「わかったー。んー……どうしようね」 どうもこうも散々だ。 むっとして睨むと、さすがに多少は気にしてるのかしょぼくれた顔で微笑む。 別にそこまで怒ってるわけでもないからいいけれど。 「風呂、はいる」 身体を起こし言うと、龍太郎は目を輝かせる。 「一緒にはいろっ」 能天気で変態で、心底困ったやつだ。 それでも龍太郎を許してしまう俺がいる。 一生こいつには、敵わなそうだとなんとなく思った。

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