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赤いあと 《涼香》

結局二人で風呂に入ることになった。 身体がまだ熱を持っているからか、何となく服を脱ぎにくい。 一方の龍太郎は隣で平然としている。 茉子にあんな姿見られたばかりというのに鼻歌混じりに上機嫌だし。 「ぬーがないの?」 既に上半身裸の龍太郎が聞いてくる。 程良く筋肉のついた身体はやけにかっこよく見え、すぐに目を逸らした。 男同士だしどうってことない。 無いはずなのになんで、ドキドキしてしまうんだろう。 「脱がせようか?」 「自分でする、から!」 からかうように聞かれると、一瞬想像してしまって顔が熱くなる。 こうして、龍太郎といるといつもの自分を乱される。 余裕が無くなる……。 平常心を装ってシャツを脱ぎ、中に着ていた長袖も脱いだ。 洗面台の鏡に自分の身体が映る。 筋肉がついてるわけでもなく、色も白い。 見慣れたそれに見慣れないものがあった。 「……」 鎖骨のあたり。 赤く鬱血したような小さなあとだ。 「これ……」 「あー、気付いちゃったか」 「さっき吸ってたとこだろ」 「うん、キスマークだよ」 にこっと笑い龍太郎は後ろから抱きついてくる。 「キス、マーク……」 「これついてると、やらしーく見えるね?」 耳元で囁くような声に、また一気に顔も身体も熱くなる。 赤い痕を見ていると、龍太郎に触れられた感覚が呼び起こされる。 こんな事も許してしまう心の隙を見せられているようだ。 龍太郎のもの、だと示されてるようにも思える。 「もっとつけてもいい?」 鏡越しに絡む視線を逸らせない。 俺しか見えてないみたいに真っ直ぐで、なんて意地らしいのだろう。 「もっと……?」 「うん。こことかさ」 「……っ!」 そっと背中を舐められた。 思ったより敏感になった身体がびくっと震えた。 優しく唇が触れ離れて、また触れると今度はゆっくりと吸われる。 あぁ、また……。 見えない場所に付けられる。 ほんとは付いてなんて無いのかもしれないのに。 唇の触れる場所、どこもかしこも龍太郎に染められていくような感覚がした。

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