106 / 144

溺愛 《涼香》

切羽詰まった顔で立ち上がる龍太郎。 「そこに手、ついて」 湯船の縁を差され、されるがままに手をつく。 龍太郎に腰を突き出すような格好になってしまった。 何でって聞く暇もない。 なにいきなり発情してんだろ……。 思い当たるのは、俺が笑ったってことだけど。 まさか、それで……? ……どんな顔、してたんだろう。 今更ながら後悔していると、冷たい液体が尻にかかってつい身体が跳ねてしまった。 「ボディーソープ、冷たかった?」 「う、うん。……その、入れるの?」 野暮な問いとは思うけれど、聞かずにはいれなかった。 いきなりで心の準備が出来てない。 それに、いつもより強引で少し怖い。 「だめ、かな……」 「ううん、いいけどさ……」 「安心して。痛くしないから」 ちゅっとまた背中にキス。 それだけで、緊張も和らぐ。 体温に馴染んだボディーソープが入り口に塗り込まれ、龍太郎の指が中に入ってくる。 ゆっくりと押し広げられ、出ては入ってほぐされていく。 「っ……んぅ……あぁっ」 荒くなる息と一緒に声が洩れる。 反響して恥ずかしいのに抑えられない。 龍太郎から与えられる刺激に頭も真っ白になってしまった。 一本、二本と指が増え、出し入れされる。 指で刺激しながら、背中に大丈夫だよって何度もキスされた。 気持ちよくて、強ばってた身体から力が抜けていく。 「ここ、いいんでしょ?」 「……っ、あぁ!」 囁かれて、感じやすいとこを指で刺激され、身体が仰け反った。 何度も身体を重ねる内に、龍太郎にはそんなとこも知られてしまってる。 「かわいい。ね、いれるよ? もう、俺もきつい」 火照る身体から指が抜かれて、龍太郎のがあてがわれる。 熱くて指とは比べものにならない。 ゆっくり押し入ってくる感覚に息が詰まった。 「涼香ちゃん……」 奥まで入ると龍太郎が抱きついてきた。 ぴったりと身体が密着し、龍太郎の体温を感じた。 鼓動まで伝わってくる気がして、何とも言えない充足感でいっぱいになる。 「りゅうたろ……」 「なぁに?」 「……すき」 抱きついたりキスしたり、繋がったり。 そんなひとつひとつの行動の中にも龍太郎の真っ直ぐな愛が詰まってる気がする。 ただでさえ平然と恥ずかしい事を言うのに。 それに対して俺は意地っ張りで素直になれない。 だから、今だけは雰囲気に呑まれた事にして少しだけ素直になりたい。 「そんなに、煽んないで……。俺も大好きだよ、涼香ちゃん」 嬉しそうな龍太郎の声にほっとする。 背中に唇が触れ、ゆっくりと龍太郎が動き始めた。 声を抑えることも忘れて、ただ龍太郎の感覚に悶えた。 「涼香ちゃん……好き」 龍太郎は何度も何度もそんなことを言った。 いつだって、大切な人が離れていってしまうんじゃないかと、怖くてたまらない。 傷つきたくなくて心を閉ざしてる。 だけど、龍太郎はこんなに俺が好きで、好きで好きでしょうがないみたいに見えるから。 傷ついてもいいって、息も出来ないくらい深く龍太郎を好きでいたいって、そう想ってしまうんだ。

ともだちにシェアしよう!