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猫の恋 《涼香》
ひとしきりし終えて体も綺麗にして、二人では少し狭い湯船につかった。
「腰痛くない?」
「痛いよ、尻も」
「いやぁ、涼香ちゃんが煽ってくるからもう抑えが効かなくて」
いつもより激しくされて、疲労感がすごい。
とはいっても、抱き締められたままされるのは嫌いじゃないなと思った。
背中にキスされるのも。
正面に座ってる龍太郎の手を握ってみる。
龍太郎の方が体温が高いのかあったかいんだよな。
「あれ、言い返してこないね」
不思議そうに首を傾げる龍太郎。
確かにいつもなら言い返す。
実際、煽ったつもりないし。
けど、煽ったにせよ煽られたにせよ、俺で欲情したなら、それはそれで嬉しいかもなって。
いや、ただ疲れてるだけかも……なんてかぶりを振って、身体を寄せて抱き付いてみる。
「あまえんぼさん、ね」
「うん」
「かわいい」
触れるだけの口付け。
甘いな、なんか。
「涼香ちゃんってさ、猫みたいだね」
「そうかな」
「うん。いつもはつれなくて、気まぐれにこうして甘えてくる」
「龍太郎は、猫……好き?」
「動物の中だと一番好き」
はにかむ顔が可愛くて、つられて顔がにやけた。
「猫か……」
ふと、ある句を思い出した。
「……恋猫の、恋する猫で押し通す」
「俳句?」
「うん」
「どういう意味なの?」
「……秘密」
「えー、ずるい。もう一回言って」
「やーだ」
ぎゅっと強く、龍太郎を抱き締める。
恋する猫は、恋だけに夢中。
人目もはばからずその気持ちを押し通す。
恋しても、人はそれだけでいられないけど。
少しくらい周りを気にしないで、龍太郎のことだけみれたらなって。
そんなこと想ったのは、やっぱり秘密。
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