115 / 150
駄々っ子 《涼香》
「龍太郎さん、流石に今のは痛そう」
「そう、じゃなくガチでいたい!」
「……薫が悪いし」
ゲームを中断され吉良も傍にやってきた。
「じゃれてただけじゃない」
「そうだとしても、嫌だ」
駄々をこねているような言い草の龍太郎。
ぎゅっと手に力をこめられ、体が密着する。
首元に顔を埋められて、少しくすぐったい。
「龍太郎心がせまいぞ!」
「……後で杏ちゃんに言いつけるから」
「いやいや、涼香っち男だし。それに、杏も秋良のお仲間だから喜ばれるだけだぞ」
「じゃあ、今日だけ……絶交する」
不貞腐れて、子どもじみたことばっかり龍太郎は言う。
それが可愛くて、笑みが零れてしまう。
「龍太郎」
名前を呼ぶと少し体が離れて、口を尖らせ不満げな表情がよく見えた。
その顔、可愛すぎるだろ。
愛しいって、こういう気持ちを言うのかもな。
「ふざけてただけだから、許してやって」
もっと真面目な顔で言うべきなのだろうけれど、どうしても顔が緩んだ。
「その顔……ずるいって、もう」
ぎゅうっとまた抱きしめられた。
「薫、ごめんね……」
「いいよ。絶交もなしだよな?」
「うん、しない」
二人の仲の良さを知ってるからケンカはしてほしくない。
怒ったりなんて普段はしないのに、俺の事でなら感情的になるんだもんな。
嬉しくて、龍太郎の肩口に頭を寄せた。
ともだちにシェアしよう!