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昼休み2 《江》

松谷さんを連れてやってきたのは美術室。 「なんで美術室?」 「ここなら、二人きりになれるから」 昼間は滅多に人は来ない。 だから、ここならいいよね。 引き寄せてぎゅっと抱きつく。 大きな背中に手を回すと、松谷さんも抱きしめ返してくれた。 「2号に抱きついてみたけど、やっぱ本物がいいな」 「2号って……あ、もしかしてこないだ取ったぬいぐるみ?」 「うん。アライグマの」 俺に似てるって言ってたアライグマ。 いつの間にか2号なんて名前ついてたんだ。 それに、 「寂しかったんだ?」 直接抱きしめられないからぬいぐるみを代わりにしてたのかな。 その光景を想像して顔が緩んでしまう。 「うん……ずっとこうしてたい」 ぎゅーっと抱きついてくる松谷さん。 囁くような低い声にもドキドキする。 「かわいいね」 頭をそっと撫でると、身体が少し離れ目があった。 松谷さんってば、ちょっぴり気恥ずかしそうだ。 「かわいいって、俺が?」 「うんっ。松谷さん、かわいいよ!」 「そんなこというの樺島くらい」 「俺の前だから、かわいいとこ見せてくれるんでしょ?」 自分で喋ってすぐに、くさい台詞だと顔が熱くなってきてしまう。 そんな俺を見て松谷さんは笑う。 「かもな?」 くすくす笑って頭を撫でてくる。 あーあ、かっこつかないなー。 でも、こうして撫でられるのも好きだし。 笑顔を見れたから嬉しいけれど。

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