121 / 150
昼休み5 《早苗》
「これ、食うか?」
お弁当を食べ終えて、思いだしたように剣介は言った。
取り出したのは小さく握った赤飯のおにぎり。
「もしかして、秋良ちゃんからもらってたもの?」
「おう。一応……二人で食べた方がいいかと思って」
「そうだね?」
ちょっぴり恥ずかしい。
付き合ったお祝いなんて。
嬉しいのは、勿論嬉しいけど。
「秋良ちゃんっていい人だよねぇ」
「……そうか?」
「うん、優しいし面白いし」
「ふぅん」
剣介はむすっとしておにぎりを口に運ぶ。
あれ?
なんか、すねちゃった?
「そういやさ。この間も仲良さそうに話してたよな榎本と」
「そう、だったかな?」
「愛してるーとかなんとか言ってただろ」
「そんなこと……あ、たぶんそれ、秋良ちゃんが剣介の真似してたんだよ」
放課後にクッキーの味見して貰ったときだ、きっと。
「俺の真似?」
「うんうん。クッキー貰ったら剣介喜んでこういうこと言うんじゃないかって」
「……そうだったのか。てっきり榎本がお前に言ってんだと思って」
剣介はきまり悪そうに笑う。
「小春のこともあったから、焦った」
「そっか。あれも浮気になちゃうのかな?」
「なちゃうのかなって」
真面目に考えてみてると剣介に笑われた。
「そうだよな。よく考えたらそんなことしねぇよな、早苗だもんな」
「うん、秋良ちゃんはお友達だよ」
ちょっと不思議。
焼きもち妬くんだな、剣介も。
嬉しくてにやけてきてしまう。
ともだちにシェアしよう!