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再会6 《涼香》

「黒髪にしようかな。伸びるの遅いから時間かかるけどさ」 長めの髪に触れながらそいつは言う。 名前何だったっけ。 聞き流したのを少し後悔した。 仲良くしたい訳じゃないけど、仲良くしたくない訳でもない。 やや垂れ目な優しそうな瞳と目があった。 「そしたらお友達になってくれる?」 よく見るとその微笑みは、いつか見たもののようで。 馬鹿みたい。 彼と重ねると心臓が高鳴った。 目をそらすとそいつはくすりと笑う。 「考えておいて」 そう言うとそいつは立ち上がった。 見上げるとぽんぽんと頭を撫でてくる。 嫌なのに、手を払えない。 もう行くのかと言いそうになって口をきつく結んだ。 「じゃあ、またねー。涼香ちゃん」 名残惜しそうな顔もしないでそいつは背を向ける。 外はまだ雨が降り続いている。 夏の暑さも今日は薄れて、半袖のシャツだと肌寒い。 だからか、つい握ってしまったそいつの手がやけに暖かく感じた。 「涼香ちゃん……?」 「……迎え来たから、乗っていけば」 何をしているんだろう。 心臓の鼓動が五月蝿い。 顔を見れない。 顔を見せられない。 咄嗟に出た言葉を撤回する暇もなく、国木田の声が雨音と共に聞こえてきた。

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