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再会8 《龍太郎》

執事みたいな国木田さん。 高そうな車。 いいとこのお坊ちゃんなのは噂に聞いていたけど、本当だったんだと感心してしまう。 クラシックだろうか、ピアノの曲が流れていた。 ちらりと隣の涼香ちゃんを見る。 窓に身を寄せて、外を眺めていた。 エンジン音も静かだから、雨の音や落ち着いたピアノの音が耳を占めた。 「ご自宅はどのあたりでしょうか?」 ミラー越しに国木田さんと目が合う。 凄く優しそうな叔父さんで、この人も品がいいというか。 この空間の中で俺、浮いてるな。 「えっとバイトあるんで駅まで、お願いします……」 「承知しました。では駅まで」 「すいません、お願いしますっ」 国木田さんの声が穏やかだからなのか、居心地は思ったより悪くないけれど。 それに夢みたいだ、こうして涼香ちゃんの隣に座れるなんて。 涼香ちゃんの方から乗っていけば、なんて。 彼の優しいところが好きだ。 あの日、ぶつかったのに嫌な顔もしないでマフラーを拾ってくれた。 そのあと教室だって一緒に探してくれた。 優しくて、すごくきれいで、それだけじゃなく運命みたいな何かを感じた。 電気が走るみたいに、目が合ったとき、この人だって感じた。 隣にいる涼香ちゃんをちらりと盗み見る。 こっちは向いてくれない。 なぜか、切なそうな表情で外を眺めている。 どうしてこんなに悲しそうなんだろう?

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