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再会9 《龍太郎》
そっと手を伸ばして彼の右手を握る。
涼香ちゃんは俺の手を見下ろして、それから俺に顔を向ける。
「なに?」
「悲しそうな顔、してるから」
「……してない」
ふいと顔を背けられる。
その耳が赤くなって照れてるのがわかった。
言葉と裏腹に表情や声色なんかで、なんとなくわかってしまう。
顔を見られていて恥ずかしかったのかな。
否定するまでに間があったから、悲しいのは本当。
手を払わないからちょっとは心を許してくれてる、はず。
嬉しいのと安心したので顔がにやける。
ミラーに映る国木田さんも微笑んでいた。
涼香ちゃんは、わりかしわかりやすいみたいだ。
可愛い。
ほんとに黒髪にしようと改めて思った。
染めるんじゃなく地毛がいいよね。
大して染めてることにこだわりもない。
涼香ちゃんが好き。
好きになってもらえるなら、それが一番いい。
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