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再会10 《龍太郎》
駅に着くまで、国木田さんとちらほら話した。
その間中、手を握ったままだったけど涼香ちゃんは何も言わない。
「ありがとうございました。涼香ちゃん、またね」
「あぁ」
素っ気ない声。
けれど視線は、俺の手が離れた右手に向けられている。
名残惜しいと言っているように見えた。
可愛いな。
俺ももっと涼香ちゃんといたいよ。
心の中で言って、微笑む。
国木田さんがドアを開けてくれた。
もう一度軽く手を握りバイバイと呟けば、照れて顔を逸らされる。
勇気を出して声をかけて良かったな。
車を降りて国木田さんにお礼を言うと、これからも仲良くしてあげて下さいと笑顔で言われた。
国木田さんもあたたかくていい人で、好きだと思えた。
車が去るのを見送ってもまだ顔はにやけていた。
雨は激しいまま。
涼香ちゃんは、どうしてあんなに悲しそうだったんだろう。
車に乗っていた間、気になったことだ。
伏せた視線、憂いだ表情。
彼の顔を思い浮かべて胸がきゅっと苦しくなる。
笑顔を見てみたい。
いつも難しい面持ちで、周りを警戒して顔を強ばらせている彼の微笑むところをみたい。
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