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夢見の悪い日に2 《涼香》
目覚めると雨が降っていた。
しとしとと止みそうにもない雨だ。
部屋は薄暗い。
時計を見ればまだ朝の4時を過ぎたばかりだった。
頭も体も重い。
体を起こし部屋の明かりを点け、本を開いた。
夢見の悪い日は、そうして過ごしてきた。
また寝れば同じ夢を見る。
そしてまた起きると絶望する。
誰もいない部屋もベッドも寒くて、寒くて、嫌いだ。
彼女がいればいいのにと、こんな年になってもいつまでも執着している自分も嫌いだ。
『涼香ちゃんのこと好きだから仲良くできたらなって思って』
『悲しそうな顔してるから』
ふとあいつの言葉が浮かんできて胸が苦しくなった。
最近は母の夢も見なくなったのに、きっと桜井のせいだ。
彼の優しげな微笑みや柔らかな声、手の温もりも全て彼女を思い起こさせる。
だから、またこんな夢をみたんだ……。
本に没頭しようにも出来ず、雨音に無性に寂しさを覚えた。
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