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プールと未遂1 《龍太郎》
快晴までいかないが晴れの日の放課後だった。
廊下で涼香ちゃんを見つけて駆け寄った。
「やっほー」
「……なんだよ、またお前か」
「見かけたからお話ししに来た」
「話す事なんてない」
つんと顔を背けられる。
その横顔を可愛いなって見つめていると、突然後ろから肩に手を置かれて反射的に身体が跳ねた。
「なんだ、秋良か。びっくりした~」
振り向くと得意顔の秋良がいた。
「なーにしてんの、ってあー、涼香くんとお話ししてたのか」
俺の隣に並ぶ秋良を涼香ちゃんは迷惑そうに見る。
「……なんだよ」
秋良にじっと見つめられて、涼香ちゃんは不機嫌そうな声を漏らした。
「もっとにこっとしたらいいのに」
「はぁ?」
「涼香くんかっこいいんだから、もっと笑ったら素敵なのになって思ったの!」
「……余計なお世話だ」
「可愛くないなー」
「うるさい。というかお前誰だよ」
「榎本秋良だよ。あ、龍太郎とは只の幼なじみだから、安心して!」
秋良と話してる涼香ちゃんはやっぱり少し警戒してるみたいで、それがまた微笑ましい。
「安心も何も、関係ない話だ」
「えー、でも龍太郎は涼香くんのこと好きでしょ? 涼香くんもその気になってたら、勘違いされるのは困るし」
「その気に、なるわけないだろっ」
「の割にここ最近仲良くない?」
「それはっ、こいつが勝手に絡んでくるだけだ!」
「もう、可愛くないなぁ」
助けを求めるみたいに涼香ちゃんは俺を見てくる。
秋良のお節介にたじたじな涼香ちゃんをもう少し見ていたい気もした。
「涼香ちゃんは可愛いもんね」
「……お前。馬鹿にしてるだろ」
「してないよ?」
ふんっとまた涼香ちゃんに顔を背けられた。
ほんとに可愛いと思ってるんだけどなぁ。
ほんのり染まる頬。
横から見える顔立ちも素敵だ。
「じろじろ、見るな……」
「はーい」
睨んでても、可愛い。
涼香ちゃんが好きなせいかな。
全部全部可愛くて仕方ないよ。
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