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プールと未遂2 《龍太郎》

「あれー、なにしてんのー龍太郎!」 ばたばたと薫が走ってきた。 その後から爽やかに笑ってる吉良も歩いてくる。 「涼香っちとお話?」 「そんなとこ」 「秋良もやっほー」 「やっほ、うめちゃん。杏ちゃんは?」 「俺よりも杏かよ!」 薫が来ると一気に賑やかになる。 目があうと吉良は肩をすくめた。 「龍太郎さんは、めげないねぇ」 「ほんとしつこい」 「もー、またそんなこと言って」 涼香ちゃんと吉良が仲いいのは事実なんだろうけれど、見てると少しだけもやもやする。 「素直じゃないんだから」 「うるさい」 吉良は涼香ちゃんのこと、俺よりずっと知っている。 涼香ちゃんだって心を許しているみたいだ。 中学から友達だったらしいから、当たり前なんだろうけど。 吉良が羨ましい。 いつもわからないんだ。 どうやって距離を詰めたらいい? 一方的に好きになって好きになりすぎて空回る。 こうして隣にいれるようになるだけで、幸せだよ。 でも、もっともっとそばに行きたい。 そう思うとどうしようもなく落ち着かなくなる。

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