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プールと未遂3 《龍太郎》
にしても、このメンバーで話すことも多くなったなと思う。
やっぱりなんというか、運命的だ。
薫と友達になって、その友達の吉良とも知り合った。
そして吉良は、涼香ちゃんと友達だったと。
世間は狭いもんだな。
「なににやけてるんだよ」
目があってにこっと笑ってみる。
すると涼香ちゃんは恨めしそうに目を伏せた。
少し染まる頬に、期待がまた膨らんだ。
「おー、良いところにいた」
涼香ちゃんに見とれていると、つばちゃんこと椿根先生が歩いてきた。
「おいそこの不良ども、いい仕事持ってきてやったぞー?」
「不良? 誰のことだろな~」
「とぼけんな梅田。あと桜井もな。坊主にされたくなかったら、黙って聞けよ」
「つばちゃん、それ脅しー!」
「脅されたくなかったら、素直に髪を黒くしろって梅田」
「それはやだって。で、仕事ってなにー?」
薫とはなんとなく髪を染めた仲間だったりする。
生徒指導のつばちゃんには、多大なる迷惑をかけている訳だ。
それでも、何だかんだいろいろ話を聞いてくれたり、無理矢理に変えようとしたりしてこなくて、いい先生だと思う。
ちょっと口は悪いけれど……。
薫が聞くと、つばちゃんはにやりと笑った。
「そろそろプール開きするから掃除、してくれとよ」
「えぇー。プールなんて水泳部しか使わないじゃん!」
「知らんのか、二年から体育の選択であるぞ」
驚いたかと思うと、ぱっと顔を綻ばせて薫はこちらをみた。
顔がにやけていた。
あぁ、うん、何となく考えてることわかった。
「龍太郎、水泳にする?」
「うーん」
水泳は苦手でも得意でもない。
けどどうせなら、涼香ちゃんと同じのをとりたい。
なんて思うわけで。
「涼香ちゃんは、なに選択する?」
「……水泳はとらない。日焼けする」
「ぷっ、日焼けって涼香くん、女子みたーい」
秋良に笑われてばつが悪そうに涼香ちゃんは照れた。
「ひりひりするって嘆いてるもんねぇ、毎年」
吉良がそういうように、涼香ちゃんの頬も半袖のシャツから覗く腕も色白で、確かに太陽には弱そうだった。
「吉良、一緒に水泳にしよう! そしたら女子も増える!」
「あぁ、薫。まさかとは思うけど」
「女子の水着見たいだろ! 見るしか無いだろー!」
「うめちゃんサイテー、可愛い彼女がいるのに」
「それとこれは別だって。なぁ、龍太郎?」
薫が肩を組んでくる。
まぁ、女子の水着をみたいのもわかる。
わかってしまうけど。
今は、涼香ちゃんのが見たいって思う。
細身で色白、きめの細かい肌。
腰が細くて脚もすらっとしていてきれいだろう。
髪の濡れた姿はどんなだろうか。
どんな姿で泳ぐのだろう。
頭の中は、涼香ちゃんのことですぐいっぱいになってしまう。
「俺は一途だから」
見つめて言うと、涼香ちゃんの瞳が俺を映した。
頬が染まり、視線をさまよわせて眉間に皺を寄せる。
ひとつひとつの小さな仕草が、期待ばかり膨らませていった。
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