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プールと未遂5 《龍太郎》

「なぁ」 「なぁに? 涼香ちゃん」 ふいに話しかけられて、嬉しくてつい声が上擦った。 「お前って変だよな」 「へん?」 突飛なことに聞き返すと、涼香ちゃんは呆れたような顔をする。 「男が好きだって、薫にもさっきの女にも話してるんだろ」 「うん。話してるね」 「どう思われるとか、気にしないのか……?」 「そりゃあ……、するよ」 気にするけど。 気にしないわけないけれど。 「でもね、もう後悔したくないんだ。隠して苦しむより、当たって砕けろってのが性に合ってると思うし」 「ふぅん……」 「それにね、話してみたら意外とみんな普通に受け入れてくれたよ。たまたまそういう人が、周りに多いのかもだけど」 幼馴染みの秋良は、驚いてはいたけれど応援してくれてる。 薫はオープンでいい奴な上に、杏ちゃんの影響で耐性が出来てるらしい。 叔父さんのヒロちゃんだって、俺とおんなじだから相談しやすい。 そんな弟をもつ母さんもそっち方面には理解がある。 つくずく恵まれてるって思う。 まぁそれでも、カミングアウトするのはいつだって怖い。 受け入れられないんじゃないかって、不安は付きまとう。 「そういえば、涼香ちゃんもあんまり気持ち悪がったり、しないね?」 触れてみても、口説こうとしてみても照れるばかりだ。 生理的に無理なんて感じでは無いように見える。 「気持ち悪くないとも言ってないけどな」 つんと澄ました声。 素直じゃない言葉に、ほのかに染まる頬に、少しだけ試してみたくなった。 「あ、うん、……そうだね」 わざと声のトーンを落として、大袈裟に落ち込んだ振りをする。 真顔で目を伏せて自嘲気味に笑い、涼香ちゃんから目を逸らした。

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