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プールと未遂7 《龍太郎》

途中で吉良が気づいてジャージを取りに戻ったり、調子乗って廊下を走っていた薫が通りすがりの先生に怒られたり、グダグタしつつプールの方へ向かった。 午後四時を回ったグラウンドは、まだまだ日が高い。 そんな中、野球部や陸上部なんかも練習を始めていたが、グラウンドの脇にあるプールにはひとこっこひとりいない。 「ガチで俺たちだけなんかよー」 「ま、一面だけだしなんとかなる、かな?」 「ねぇ薫、ここの鍵開けて」 プールの側にある更衣室らしき小さな建物。 つばちゃんの話では掃除用具もここに納まってるらしい。 鍵を預かってる薫が扉を開き、四人で中に入った。 「蒸し暑いな」 「おい、龍太郎!」 「ん、なに?」 薫に引っ張られて立ち止まる。 指差す方を見れば、そこは女子更衣室の入口だった。 「今なら行ける!!」 「……いってらっしゃーい」 「おいー、一緒にいこーよ! な? りゅうたろうってばぁ!」 引っ張られるのを無視して、涼香ちゃんたちの方へ向かう。 第一、人がいないときに行って何になるのか。 いや人がいる時にいくのは犯罪になるけどさ。 「あれ、用具室も鍵かかってる」 吉良がドアノブをひねりつつ言う。 「薫、鍵は?」 涼香ちゃんに言われて薫は鍵を差し出すが、そこにはさっき使った鍵一本しかない。 「一応使えるかやってみるか」 と、試してみたもののやはりはまらない。 「しょうがない、つばちゃんとこに聞きに行くかー」 「そうだね。僕と薫で行ってくるから、着替えでもして待ってて」 「おっけー。いってらっしゃい!」 荷物だけ置いてまた校舎に戻っていく薫と吉良を見送って、内心ガッツポーズを決めていた。 今日はこんなにも涼香ちゃんと一緒にいられる!

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