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プールと未遂10 《龍太郎》

意味わかんないって困惑してる顔も、なんてそそるのだろう。 「ねえ、涼香ちゃん……涼香ちゃんは、俺とこういうことするの無理?」 汗ばむ肌に手を這わせ、見つめたまま顔を近づけていく。 涼香ちゃんは、 赤らめた顔を伏せて黙ってただ俺のシャツを掴んでいた。 まとわりつくような暑さに汗が滲んでくる。 遠くから運動部の声が響いていた。 脇腹や背中を撫でると、涼香ちゃんは微かに吐息を漏らす。 押し返すでもなくただぎゅっとシャツを握る仕草は、嫌がってるってよりもすがってるように思えた。 顔を背けて晒された首もとに吸い寄せられるように唇を落とした。 「っ! お、おい……っ」 びくりと身体を反応させ、彼は軽く俺を押し返す。 もっと強く突き放したらいいのに。 抵抗とも言えないその抵抗は、むしろ行為を許してるようだ。 「涼香ちゃん……」 俯いて伏せるその顎を掬って、視線を絡ませる。 上気する肌や浅く吐く吐息に酷く欲情した。 こんなの良くないって頭ではわかってる。 そんなに関係を急ぐこともないって。 だけど、それでも涼香ちゃんが受け入れてくれるような気がして歯止めが利かなくなる。 噛み締めて少し濡れた唇に引き寄せられ、顔を近付ける。 俺の唇が触れそうになり、涼香ちゃんは小さく、 「やっ……」 と、声を漏らす。 全然嫌そうな顔してないくせに、そんなこと言うの? こんなにも俺をおかしくさせてるのに。 一層余裕はなくなった。 「嫌ならもっと突き放してよ。……でないと、勘違いしちゃうよ……?」 また顔を寄せていくと、涼香ちゃんはぎゅっと目を瞑った――。

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