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青春 《龍太郎》
そんなこんな、やっと掃除に取り掛かった。
土埃やら藻やらで汚れたプールを目の前にすると、思ってたよりずっと広く感じた。
プール掃除っつったら、普通ならクラスでわいわい掃除したり、水泳部の連中で青春したりするイベントなのになー。
吉良が水をホースで撒いて、俺たちはデッキブラシで擦っていく。
「これ四人じゃ終わらなくね?」
と薫がぼやく。
「ほんと、それなー」
その隣でついつい手を休めてしまう。
始めたばかりだけど終わりそうにもないもの。
「ちょっと問題児二人、真面目にやりなよ。せっかく印象良くするチャンスなんだからさぁ」
「なんだよ吉良、つばちゃんみたいなこと言って〜」
吉良の言う通り、流石に少しくらいイメージアップしとかなきゃとは思う。
緩めの学校って言っても、髪染めてんのはいい目で見られないし。
「吉良、こっちに水〜!」
「はいはーい」
「のわっ!? 冷たッ!」
「あはは、飛ばし過ぎちゃったごめーん」
「お前わざとだろ! ゆるさん!!」
水をかけられた薫が吉良を追いかけ出した。
お小言言って真面目にやんのかと思いきや、吉良はふざけだす。
こういうかっちりし過ぎてないとこも女子にモテる所以、なのかな?
「吉良って何気に面白いやつだよねー」
「そうか? まぁ、そうかもな」
水を掛け合って遊び始めた二人を眺めて、涼香ちゃんは薄っすらと目を細め、僅かばかり口の端を上げる。
あれ……笑った?
思えばいつも涼香ちゃんは難しい顔をして、照れても眉間に皺を寄せて笑顔って訳では無かった。
もともと顔が整ってるのもあるけど、涼香ちゃんの笑顔は、めちゃくちゃきれいだった。
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