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再会の前に2 《龍太郎》

放課後、その日はバイトも休みで、薫が部活に行くまでだらだらと話し込んでから教室を出た。 廊下に出ると女子が二人たむろしていたが、他の教室はもう誰もいなかった。 階段を降りて一階の廊下を進み角を曲がる。 昇降口前の廊下には、中庭に面して出窓があり腰掛けられるスペースが設けられている。 そこに男子生徒と女子生徒が座っているのが見え、俺はもしやと歩みを止めた。 「面識がないし迷惑だっていうのもわかっているんですけど……よかったらお友達から始めさせてください!」 女子生徒の若干震えがちな声が響く。 告白の場面だと気づいて、慌てて引き返し身を隠した。 「悪いけど、無理」 少しの間のあと男がそう返した。 女子生徒は、ぱたぱたと駆け足で俺の横を通り過ぎて二階に上がっていった。 涙を堪えるような苦々しい顔をしていた。 恐る恐る覗いてみれば、男子生徒は深くため息をついていた。 よく見るとそれはあの林宮涼香で、薫の話が本当なのだと悟った。 ただやけに辛そうというか重い空気をまとっていて、噂話とはまた違う印象を受けた。 まるで深く傷ついているような、同情しているような――。 それから彼を見かけるたびに目で追うようになっていた。 一組と一緒の体育の時間が待ち遠しかった。 数学や英語も同じく合同だったが、そこからまた成績によって二組に分けられていた。 生憎俺はどっちも苦手な方で頭のいい彼とは別の教室だった。 ただただ声をかけることもできず時間だけが過ぎていた。 正直、ずっと見つけるのが怖かった。 五組くらいしかない小さな学校で見つけるのは言うほど難しくなんて無い。 ただ見つけたところで、好きなんて言っていいのかわからなかった。

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