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雨とキス2《涼香》

そのまま、後ろに下がるとベッドに足がつき、彼女に押し倒された。 「な、なにをして……」 「大丈夫。2人だけの秘密にしましょうよ」 混乱している俺をよそに、かすみさんはうっすらと笑みを浮かべながら続けた。 「私もね奏雨さんの気持ちよくわかるの」 彼女の手が頬に触れた。 「宗さんの寂しさも、涼香くんの満たされない心も。ねぇ、私もね、帰ってこない人を待つのに疲れたのよ。涼香くんならわかってくれるでしょう?」 いつしか声を震わせて涙ぐむかすみさんに、同情せずにはいられなかった。 よく知っている。 待ち続ける彼女のさみしげな横顔を。 俺は母がいればそれでいいと思っていた。 彼女もそうならと願っていた。 それでも現実は、違う。 決して俺では満たせない心の隙間が誤魔化しきれないほどに広がっていた。 とてもじゃないが俺にはかすみさんを拒絶することが出来なかった。 ただ、呆然と彼女の泣き顔を見ていた。 ぽたりと生ぬるい雫が頬に落ちてくる。 くしゃりと眉間にしわを寄せたかと思うと、次の瞬間には視界が暗くなり唇に柔らかな感触を感じた。 「……っ!」 咄嗟に彼女の体を押しやった。 それでも確かに生温かい感覚が唇に残っていた。 「大丈夫。わたしがリードしてあげる……」 かすみさんが自分の服に手を掛けるのが見えて、慌てて彼女の下から這い出て駆け出していた。 酷い罪悪感が胸を占める。 どれだけ彼女が傷つくか想像するだけでいたたまれなくなるが、それ以上に感じた嫌悪感に突き動かされていた。 駆け足で1階に降りて、そのまま玄関の扉を開けて、未だに雨の降りしきる外に飛び出した。

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