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雨とキス4《涼香》

駅から歩いて10分ほどの龍太郎の家にやってきた。 住宅街に並ぶ、やや築年数のありそうな2階建ての家。 玄関には靴が数足並び、ほこりを被ったサッカーボールなんかが乱雑に置かれていた。 「身体冷えちゃったでしょ」 龍太郎に勧められてシャワーを借りた。 家族が多いからか数種類のシャンプーが並び、ここもまた生活感に溢れている。 浴室から出ると龍太郎が服を置いていってくれていた。 「服、ありがとう」 居間に入ると龍太郎がどこか落ち着かない様子でソファに座っていた。 「うん。そだ、なんか飲む? なにかあったかな」 龍太郎の隣に腰掛けると、ぱっと彼は立ち上がってキッチンの方へ歩いていく。 そんな彼を目で追うと、ゆったりとしたキャラクターものの部屋着姿の女の子が、部屋に入って来るのが見えた。 「お兄ちゃん、あれバイトは?」 「休み貰ったの。涼香ちゃん困ってたから」 「涼香ちゃんって、わ! こ、こんにちは!」 彼女の視線が俺に向かい、目が合う。 そのまま赤くなると、彼女は慌てて龍太郎の影に隠れるようにして飛び退いた。 「お邪魔してます」 「こいつ、俺の妹の茉子。今、中学生で」 「ちょっとおにい! 友達呼ぶなら言ってよ、もー!」 小声で言いながら、龍太郎を小突く茉子。 「……茉子です。その、はじめまして。ゆっくりしてってください」 「どうも……」 軽く挨拶だけすると茉子はバタバタと2階に駆け上がっていった。 いきなり訪ねてしまって悪いことをしたかもしれない。 そう思うのと同時に、龍太郎に妹がいたのだと少し意外だった。 「麦茶かコーヒーくらいしか無かったや。あと水。何にする?」 呑気に龍太郎はそう言ってダイニングキッチンから顔を出す。 「……じゃあ麦茶」 「おけー!」 しばらくしてグラスに麦茶をついで龍太郎が戻ってきた。 「俺の部屋行く?」 どこかいつもより緊張した面持ちの龍太郎。 不思議に思いつつ頷くと、2人で彼の部屋に向かった。

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