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雨とキス8《涼香》
柔らかい感触と同時に彼の温もりを感じた。
いつだって日だまりにいるような温かさを感じる。
熱が離れていって、薄く目を開けると、彼と目が合った。
ちょうど雨が上がったのか、窓から日が差し込んでくる。
龍太郎の明るい色の虹彩が光を受けて綺麗だった。
ぼうっと見惚れていると、彼は困ったようにぎゅっと眉根を寄せた。
「ごめん、俺。我慢できなくて……」
ぼそぼそと呟くような言葉に思わず笑みが漏れた。
「す、涼香ちゃん?」
赤みの抜けない顔で、不思議そうに龍太郎は見つめてくる。
「そこで、謝るのかよ」
雰囲気に飲まれてしまうかと思ったのに。
「だって、その……前、次はないって言ってたでしょ?」
嬉しさよりも心配が勝ったらしい。
どう見たって俺は許容していたのに。
どれだけ俺のこと好きなんだ。
赤くなっていたかと思うと焦りだして、そして俺が笑ってるのを見て見惚れてみたりして。
忙しいやつ。
だけど、だから、こんな素直さについ心を許してしまうのかもしれない。
「りゅうー、誰か来てるのー?」
部屋の外から女性の声がした。
おそらく龍太郎の母親だろう。
龍太郎は立ち上がると部屋から顔を出して事情を説明してくれた。
ぼんやりとまだ、唇に彼の温もりが残っているような気がして、そっと指先でなぞった。
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