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お泊り4《龍太郎》
部屋に戻ると、涼香ちゃんはゆったりとベッドを背にして座っていた。
「ただいま」
「あぁ……」
目が合ってぱっとすぐ逸らされる。
俺だけじゃなく涼香ちゃんも、意識してくれてるのかなってにやけそうになる顔を隠しながらベッドに腰掛けた。
かっこ悪いところ見せたくないのに、どうしようもなく高鳴る鼓動を誤魔化しきれずに少しの間沈黙が続いた。
ぽたぽたとガラス窓に雨が打ち付ける音が聞こえて、また雨が降り始めたのがわかった。
「その、助かった」
唐突に涼香ちゃんが切り出した。
「いきなりどうしたの」
「今日その……お前と会えて良かった」
ぼそぼそと紡がれる言葉に、ぎゅっと胸が締め付けられる。
「うん、俺も良かった」
すぐそう返すと、ちらりと彼は俺を見上げる。
そして意を決したように身体の向きを変えて俺をまっすぐと見つめた。
「その……国木田戻るの月曜になるみたいで、明日も泊まらせてもらってもいいか?」
若干不安そうな彼を安心させたくてにっと笑って見せる。
「もちろん! 好きなだけうちにいてよ」
大げさに言うと涼香ちゃんは表情を緩めて、わずかに口元に笑みを乗せる。
静かで儚げできれいな微笑みは、ずっと見ていたいくらいだ。
はぁ、ほんとにその笑い方ずるい。
まるで俺にだけ、心を許してくれているような錯覚を覚える。
ぎゅっと締め付けられる胸に気付かないふりをしながら言葉を続けた。
「けど、そしたら制服とか取りに行かないとだよね。月曜普通に学校だし」
「うん。明日……取りに行こうと思ってる」
涼香ちゃんは表情を曇らせてそう言った。
そりゃそうだよね。
「俺も! 俺も一緒に行くよ」
そう言ってみると、彼ははっとしたように俺を見上げた。
「そしたらもし、かすみさんいても平気でしょ」
「けど……」
「迷惑とか全然気にしなくていいから。俺はその、好きな子の為ならなんだってしたいんだ」
目を細め、涼香ちゃんは考え込んでしまう。
彼を見ていると思う。
暗くなりがちな彼がずっと笑っていられたらどんなに良いだろう、と。
いつもどこか控えめで、沈みがちな彼が、何を気にすることもなく笑っていられたらいいのにって。
お節介ってやつなのかもしれないけど、それでも。
「じゃあその、一緒に……」
一歩ずつでもいいから、彼が頼れる存在に。
なれてたらな、なんて。
大きく頷いて笑いかけると、やっぱり涼香ちゃんは少し照れてそっぽを向いた。
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