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水族館2《龍太郎》

期末テストをなんとか終えて、約束の日がやってきた。 土曜の午前、わくわくする気持ちを抑えながら家の前でヒロちゃんの迎えを待った。 連絡が届いてから数分後。 白いミニバンが家の前に停車し、いつも通り助手席に乗り込んだ。 「ヒロちゃんおはよ!」 「おう! さ、若人達の元気吸いに行くわよ」 「なにそれ。あ、そこ曲がって」 道順を説明しながら、一番近所の涼香ちゃんの家に向かう。 あの大きな一軒家の前に着き連絡すると、しばらくして彼が出てきた。 白いTシャツに黒のパンツとシンプルな服装ながら、スタイルがいいからかなり決まっている。 「おはよ涼香ちゃん、後ろ乗って!」 休日に涼香ちゃんに会えるだけでも嬉しいのに、まさか一緒にお出かけなんて……と顔がにやけるのを抑えるので必死だった。 しかし、顔を上げた涼香ちゃんはどこか浮かない表情で俺を見た。 「あぁ、おはよう」 朝が苦手な彼のことだから、まだぼんやりしているのかな? それとも何かあったのだろうか? 心配しつつも聞けないまま、涼香ちゃんが後部座席に乗り込んだ。 「涼香ちゃんは会うの初めてだよね。おじのヒロちゃん」 様子を伺いつつ声を掛ける。 「龍太郎からよく話を聞いてるよ。よろしく涼香ちゃん」 「……はい、よろしくです」 やっぱりどこか不安そうというか、いまいち元気が無いような気がする。 「水族館楽しみだね?」 「……あぁ、そうだな」 眉を潜め、無理やり笑ったような表情に胸がざわついた。 ショッピングや映画などの候補も上がったが、みんな長く行っていないという水族館に最終的には決まった。 思えばその話をしているときもどこかぼんやりしていた気がする。 涼香ちゃんの家から車で数分、個人病院のすぐ横の吉良の家に着いた。 家の前で待っていた彼を乗せ、最後に薫の家に向かう。 「涼香気分悪い?」 そうはっきりと聞く吉良の声が耳に入る。 「いや……まぁ、少し。眠れなくて」 「そんな楽しみだった?」 「!! そういうわけじゃ」 「涼香もかわいいとこあるね」 相変わらず距離の近い吉良には多少イラッとしてしまうが、けどなんだ寝不足だったのか。 それなら仕方ないよね。 「みんなおはよー!」 十数分ほど車を走らせ薫を乗せて、とうとう水族館に向かうことになった。 いつも以上に元気な薫のお陰で車内は一気に賑やかになる。 おしゃべり花を咲かせ、薫がのりのりで歌いだしたりと水族館までの道のりはあっという間に感じた。 7月に入り夏らしい日差しの強く照りつける、ある土曜日のことだった。

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