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水族館7《龍太郎》
昼食後、海浜公園にやって来た。
日差しが照りつけて暑いけれど、海風が心地良い。
真っ先に薫が海のすぐ近くまで駆けていく。
寄せてくる波に追いつかれないように避けて、しゃがみ込んで波に触れようと手を伸ばす。
「わぁ! おい、吉良!!」
吉良が駆け寄ってその背中を押す。
前のめりになりかける薫は大きな声を上げた。
「びしょ濡れなったら流石に車乗せないぞ~」
ヒロちゃんもそこに加わり、すぐわちゃわちゃとはしゃぎだす。
それを眺めながらゆっくりと涼香ちゃんと浜辺を歩いた。
「ねぇ、涼香ちゃん」
名前を呼ぶと、海を眺めていた彼の目が俺に向けられる。
真っ直ぐ彼を見てにこっと笑いかける。
「今日、涼香ちゃんと来られてよかったな」
すると彼は、やっぱり困ったように目を逸らした。
どこか切なそうに遠くを見て、そしてまた俺を見る。
風が穏やかに吹き付けて、涼香ちゃんの髪の毛がさらさらとなびいた。
「……俺も、よかった。来れて」
あぁ、よかった。
本当に。
もう一度彼に微笑みかけると、涼香ちゃんも小さく控えめに口の端を上げた。
1ページ1ページじっくりと紡いでいくようだ。
どれもこれも大事な思い出ばかり。
「ね、一緒に写真撮らない?」
何気ないことが初めてに思えるのは、やっぱりそれが好きな人とだから。
「写真……まぁ、いいけど」
カメラを起動して海と俺と涼香ちゃんが画角に収まるように調整する。
「もう少し寄って」
肩が触れ合う距離。
不慣れにレンズを覗く、いじらしい涼香ちゃん。
全部全部が俺にとっては特別だ。
シャッターを押して2ショットの写真に、嬉しくて思わず頬が緩んだ。
「りゅーたろー! 俺も混ぜろよー!」
くすぐったい時間を切り裂くように大声で言いながら、薫が勢いよく抱きついてきた。
「目を離すとすーぐいちゃつくんだから」
吉良にヒロちゃんもやってくる。
こうして賑やかなのもいいけど、次はきっと2人で。
2人きりで。
そんな欲を秘めながら、腕を伸ばしてスマホの角度を調整する。
「もっとくっついてー!」
「涼香っちこっちこっち」
「寛美さんも顔寄せて」
スマホの狭い画面の中ぎゅうぎゅうにくっつく5人。
あ、涼香ちゃんちょっと困ってる。
かわいいな。
「じゃあ撮るよー!」
シャッター音が響いて、早速撮れた写真を確認した。
ヒロちゃんと薫は楽しそうに微笑んで、吉良のカメラ写りの良さにはちょっとうんざりする。
そして、困りながらも控えめにはにかむ涼香ちゃん。
あぁ、今日は本当にいい日だったな。
潮風が吹き、髪が揺れる。
隣の涼香ちゃんを見ると、どこか満足そうに水平線を見つめていた。
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