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寄り道1《龍太郎》
帰りの車内は行きと違って静かだった。
疲れたのか薫が寝てしまったのもある。カーステレオから一昔前の流行曲だけが小さく流れていた。
道案内の関係でまた助手席に座っていて、過ぎていく景色をただ眺めた。
山中の道を越えたあたりで、雲行きが怪しくなり雨がこぼれ始めた。
次第に雨脚は強まり、本格的に降り始める。
雨雲に覆われた灰色の町並み。
車内のクーラーが肌寒く感じる。
明日は一日バンド練習だから、今日は早めの解散だ。
もう少し一緒にいられたらよかったんだけどな。
「そこ、曲がって」
薫の家が見えてくる。
「薫~、起きてー!」
車が止まり、後部座席を振り返る。
薫は隣に座る吉良に揺さぶられて目を覚ました。
「じゃあまた明日ー。ヒロちゃんもまたねー!」
ぼんやりしつつもそう言って帰っていく薫。
続いて吉良の家に向かい、彼もまたお礼を言って車を降りた。
最後に涼香ちゃんを送っていく。
雨脚は弱まらない。
「次の角曲がって」
そしたらすぐ彼の家だ。
2階建ての大きな建物が見えてくる。
門の前で、ゆっくりと車が停まった。
もう彼との時間も終わりかとどうしてもさみしくなる。
「涼香ちゃん着いたよ」
それでも楽しい1日だったなと思いを馳せながら振り返り、奥の列の座席に座る彼に声を掛けた。
「……」
聞こえるのは雨音だけで声は返ってこない。
遠巻きからも、俯く彼のどこか暗い雰囲気がわかった。
ヒロちゃんが運転席から操作してスライドドアが開く。
激しい雨の打ち付ける音がより大きくなった。
涼香ちゃんははっとしたように開いたドアから外を見た。
「涼香ちゃん?」
何かを堪えるように身体に力を入れ、自分の腕を握る。
彼のそんな姿に突き動かされるように、助手席を降りた。
冷たい雨が頬を肩を濡らす。
すぐ彼の横に乗り込むと、涼香ちゃんはどこか泣きそうな顔で俺を見た。
座席の上、握りしめられた手に触れる。
酷く冷たく、微かに震えている。
「大丈夫だよ」
なぜこんなに苦しそうなんだろう。
安心させるように微笑みながら繰り返した。
「大丈夫。ね、ちょっとうちに寄ってかない?」
彼はやはり何かを堪えるように眉間にシワを寄せて、力なく頷いた。
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