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寄り道2《涼香》
雨。
無慈悲に降り注ぐ雨。
行きよりずっと静かな車内で雨音が嫌に耳についた。
通り過ぎていく灰色の町。
嫌でも思い出す。
あの日の寂しさを。
母と最後に出掛けた日のことを。
あの日とは違う。
今日はずっと楽しめた。
もう一人じゃないと思えたはずだ。
薫が降り、吉良が降り、ぐっと車内が広く感じた。
龍太郎は助手席で、その横顔しか見えない。
俺の家に向かうのがわかった。
こんな時に思い出したくない。
今日だって散々迷惑を掛けたのだから。
だから、どうにか普通を装いたいのに。
あまりにもあの日の影が重なって胸をざわつかせた。
泣きそうで堪えるのに必死だった。
家の前で車のドアが開いた。
動かなきゃ、動かなきゃ……。
そう思うのに震えてくる体を押さえつけるので精一杯だった。
何を失うわけでもない。
月曜になったらまた変わらずに学校で会えるのだから。
そう思うのに、漠然とした不安が拭えない。
胃がきりきりと痛み、息が詰まる。
「大丈夫だよ。大丈夫」
ふと温かい手に包まれる。
彼の優しい微笑みに本当に涙が溢れそうだった。
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