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寄り道5《涼香》

脳天気なだけだと思っていたのに。 そんなことなど無かった。 苦しんで悩んで後悔して、それでもまた彼は人を好きになったんだ。 俺を、本気で。 「俺は……」 真剣な彼の瞳から目を逸らせずに見つめ合った。 俺は彼のことをどう思っているんだろう。 少なくとも嫌いなんかじゃない。 むしろ隣にいて落ち着くのは事実だ。 彼とのキスも不快なんて思えずにいる。 だけど好きかと言われれば、よくわからない。 ずっとずっと心を閉ざして来たせいだろうか。 「俺は……わからないんだ、いまいち好きとかそういう気持ちが」 そんな曖昧な答えに、ほっとしたように龍太郎は微笑む。 「てことはさ、完全に無しではない……って思ってもいい?」 「それは」 思わず視線をそらしていた。 確かに彼の言う通りだ。 いつもなら、こんなに動揺することもない。 告白されることが少なからずあった。 その経験から、はっきりと断った方がいいと知っているのに。 そんないつもの習慣すら頭から抜け落ちていた。 「な、ない……お前と付き合う気は」 慌てて取ってつけたように言うが龍太郎は笑ったまま。 むしろ一層頬を緩めている始末だ。 「やば、めっちゃ顔にやける」 あぁ、でも。 そんな顔のほうが似合うなんて、思わず思い浮かんだ心の声を消すように頭を振った。

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