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文化祭準備3《涼香》

『今日のねぐせ芸術的じゃね?』 ぼさぼさ頭の薫の写真に釣られ、つい笑みが漏れた。 どうしたらそんな風になるんだと言いたくなるような爆発ぶりだった。 「坊ちゃま、食事中ですよ」 「わかってる」 国木田の小言に返事をし、スマホを置いてヨーグルトを口に運んだ。 「最近、楽しそうですね?」 ちらりと見ると国木田は柔らかな表情で俺を見ていた。 認めるのは癪だが、彼の言葉通りだと自分でも思う。 以前は、少し前までは、放課後に学校に残ることも休日に友達と遊びに行くことすらも滅多になかった。 龍太郎に出会うまでは。 「そうだ、昨日、龍太郎くんの親御さんのところに伺ったんですよ。先日お世話になったお礼にと思って」 「……そうだったのか。それなら俺も一緒に行ったのに」 「そうですね。また、お宅を訪ねた時にでもお礼してくださいね」 また。 そんなのがあるのかはわからないけれど。 この間、出掛けた時……龍太郎はずっと側にいてくれた。 その前の急に泊まらせて貰うことになったときにも、迷惑だなんて顔ひとつもしないで助けてくれた。 何度も何度もあいつには助けられた。 『俺には負けるね』 テーブルの上に置いたスマホに通知が来る。 続いて画像が送られてきて、気になって画面を開いていた。 薫に負けず劣らずの寝癖頭の龍太郎の写真につい吹き出しそうになる。 「坊ちゃま」 「ん」 スマホから目を離して食事にまた戻った。 朝からこんなにも気分よくいられるのも、きっと龍太郎のおかげだ。 色付く日常をくれたのはきっと彼だ。 そんなあいつに、何か返すべきなんじゃないだろうか? と、ふと思う。 少なくとも迷惑を掛けたお詫びくらいは……。 あいつの好きなものってなんだろう。 思い返せば龍太郎のことを俺は全く知らない。

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