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文化祭準備4《涼香》
あっという間に放課後になった。
龍太郎の好きなものを探ろうとしつつも、改めて聞こうと思うとなかなか口に出来ずにいた。
今度こそと、思い立って2組の教室に向かった。
「あ、涼香ちゃーん! 会いに来てくれたの?」
「! そういうんじゃ……」
「おらー! りゅうたろうー!!」
いざ対峙し、どう切り出そうかと悩む隙もなく、薫が龍太郎に掴みかかった。
「ちょ、薫なんだよ? 今、涼香ちゃんと話してるでしょ」
「涼香っちはいいから! 今日から特訓だぞ!」
「えー、でも」
「でもじゃなーい! 昨日もバイトだからって練習出来なかっただろ」
どうやら、バンド練習の話のようだ。
気が付けば文化祭までもう日もない。
期末テストでなかなか時間が割けなかった上に、バイトもしている龍太郎だ。
練習の進み具合は芳しくなさそうだ。
「おらぁ、いいからいくぞー!」
「うわーん、涼香ちゃーん!」
引きずられるようにして龍太郎は薫に連れて行かれてしまった。
ただ、好きなものを聞こうとそれだけなのに。
こうも手こずるとは思わなかった。
「龍太郎さんに用事あったの?」
「吉良……いや、まぁ」
いつの間にか近くで見ていたらしい吉良が声を掛けてきた。
「僕が伝言しておこうか?」
「いや……」
そう言えば、吉良の方が俺よりも龍太郎との付き合いも長いし、好みも把握しているかも知れない。
「ただ、……何が好きなんだろうと思って。その、あいつには迷惑かけてるし、なにかお礼をと……」
「ふぅん、なるほどね」
俺の言葉を聞きながら、腕を組んでにやける吉良。
「やっぱいい……」
「遠慮しないで? 龍太郎さんの喜ばせ方ならよーく知ってるから、僕に任せてよ」
なかなか聞けずに焦っていたのもあるが、聞く相手を間違えたかもしれない。
そう思うのも後の祭りだった。
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