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文化祭1《早苗》

文化祭一日目。 すっきりとした晴天に恵まれて朝から一般のお客さんも多く、かなり賑わっていた。 「きゃー!」 そんな楽しい文化祭に似合わない悲鳴が次々と上がる。 暗幕で暗くなった教室の中から叫び声が聞こえてくる度に、隣の柳くんと見合っては笑いあった。 「けっこうみんな怖がってくれてるね」 「だな」 僕達のクラスでは定番のお化け屋敷をやっていた。 呪われた学校がテーマで、御札を通路の一番奥に貼ってくるというものだった。 僕と柳くんはこの時間の受付係を任され、手作りの御札を渡してお客さんを見送っては反応を楽しんでいた。 「柳くん、かっしーお待たせ! 交代しよう」 そんなシフトもあっという間に終わり、次の当番の榎本さんと杏ちゃんがやってきた。 「すっごい賑わってて模擬店どこも並んでたよ」 「けどチュロス美味しかったよね、秋良」 「ねー!」 「絶対食べた方がいいよ、早苗くん甘いもの好きでしょ」 杏ちゃんに言われて頷く。 2人の話を聞くだけでお腹が空いてきた。 「あとあと2-1のメイド喫茶は行ったほうがいいわよ二人とも! みんな本当に可愛いから!」 榎本さんが興奮気味に言う。 「メイドなぁ」 隣でぼそりと柳くんが呟く。 「柳くんメイドさん気になる?」 「はぁ? 興味ねーよ、それよか腹減ったし早く行くべ」 柳くんが席を立ち、僕も置いていかれないように立ち上がった。 「かっこつけちゃって」 「あぁ? 誰が」 ぼそっと榎本さんが言った言葉に柳くんが反応する。 「柳くんこわーい」 「ちっ、めんどくせぇ」 「あはは! いってらっしゃーい二人とも」 女の子達にからかわれて、たじたじな柳くんについ笑ってしまう。 2人に見送られて、やっと自由時間だ。 「で、やっぱり気になるの?」 「なんねーよ」 「えー、僕はちょっと気になるかも」 覗き込んで言うと、柳くんは意外そうな顔をして、そしてすぐにっと笑った。 「おめぇが気になってるのは何ケーキが食えるかだろ?」 「すごい、柳くんエスパー?」 「当たり前だろ」 ほんと僕のことは何でもわかっちゃうよね、柳くんって。 「じゃあ何を最初に食べたいかもわかる?」 「おう」 見つめ合って、息を合わせて同時に声に出す。 「「チュロス」」 ぴったりと同じ答えに本当に驚いてしまう。 「やっぱりな」 「なんでわかったの!」 「そりゃぁ……」 柳くんは得意顔で上機嫌に笑った。 「早苗のことだからな」

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