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文化祭5《龍太郎》
文化祭2日目。
昨日に引き続き、薫と2人で校内を歩き回り呼び込みをしていた。
そんななか、ある教室の前に人だかりができているのを見つけた。
どうやら1組のメイドカフェに並ぶ行列のようだ。
昨日も随分と混んでいたが、今日は比じゃないくらいに賑わっている。
流石に気になり、女子生徒に混じり教室の中を覗き込むと、視線を集めているメイドさんを見つけた。
すらっとして背が高く、遠巻きにも人目を引くが、あんな女子いただろうか?
「やばい、涼香くん可愛すぎる」
ため息混じりなそんな声が耳に入り、もしやと慌てて人をかき分けて教室の中に入った。
「あ、龍太郎さん来たんだ?」
ちょうどやってきた吉良まで、執事姿で立っている。
これは女子が集まるわけだ。
って、今はそれどころじゃない。
「吉良! あ、あの子って」
俺の目線をたどり、意味深に肩をすくめる吉良。
「涼香、ほらきて」
「……っ」
吉良に呼ばれ振り向いたメイドさんと目が合う。
俺と目が合うと真っ赤になってもじもじとする様に、本当に彼なんだとかなり驚いた。
ふわふわの黒いワンピースにフリルのついた白いエプロン。
すらっとした華奢な体型にも良く似合っているが、女子のサイズだからか丈が短く、色白な太ももまで見えている。
そして明るい髪色のツインテールのウィッグに派手すぎないメイクが可愛さを引き立てて……。
「…………」
あまりにも魅力的な姿に思わず何も言えないまま、涼香ちゃんを凝視していた。
「……、み、見るなよ。そんな」
恥じらう姿により一層、魅力が増す。
出来ることならば今すぐ連れ去って、俺だけで独り占めしたいくらいだ。
「涼香くーん、次チェキお願いしたいんだけど」
本当は褒めちぎりたいところだけれど、あまりにも完璧すぎて何も言えないまま固まっていると、女子が涼香ちゃんに声を掛けに来る。
そうか、そういえばケーキの提供だけじゃなくチェキの撮影もしているんだっけ。
「お、俺も涼香ちゃんと写真……」
呆然とする頭を振って、やっと声を絞り出す。
「チェキはドリンク注文お願いします」
そんな俺に、吉良がすかさず営業スマイルを浮かべる。
「ドリンク……5億杯ください!」
寧ろそれだけでメイド姿の涼香ちゃんと写真を撮れるなんて。
それは行列が出来るわけだ。
「おーい、龍太郎!」
「ごめん薫、後でなんでもするから!」
追いかけてきた薫を押しやって、急いで列に並ぶ。
もうクラスの仕事がどうとか関係ない。
麗しのメイド涼香ちゃんとの写真撮影。
それだけが頭を占めていた。
待つこと数十分。
やっと席についてケーキと紅茶を頂きつつも、味がわからないくらいに浮ついていた。
絶えず呼ばれてはお客さんと写真を撮る涼香ちゃん。
殆どが女子だが中には男子生徒もいて、近い距離で並ぶ姿になんとも言えない嫉妬を感じていた。
それにしても、少しだけ冷静になってみると、あの涼香ちゃんがメイドの格好をするなんて。
自分から進んで目立つことをするタイプでは無いはずだし。
もしや、吉良になにか弱みでも握られて無理やり?
「お前も撮るんだよな?」
前のお客さんとの撮影を終えて、涼香ちゃんが俺の席に歩いてきた。
「う、うん。お願いします」
涼香ちゃんがもし困っているなら助けたい気持ちはあるが、正直こんな可愛らしい姿を見られただけでも嬉しい気もする。
落ち着かない気分のまま、涼香ちゃんに連れられて、黒板前の撮影スポットに向かった。
肩を並べて立って、それだけで緊張してしまう。
「おい、くっつきすぎ」
肩が触れ合い、身を引く涼香ちゃん。
その頬が赤く染まる。
あぁ、こんなかわいい表情ずるいよ。
「だめ?」
「だ、だめ……」
見つめ合って、話している隙にシャッター音が響く。
カメラを担当している女子生徒は気だるげに慣れた手つきで写真を確認するとぐいと俺に差し出した。
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