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文化祭6《龍太郎》

途切れない行列に流石に追加注文するのも迷惑だろうと、ケーキと紅茶を食べ終えて泣く泣く教室を出た。 メイド姿の涼香ちゃんとの2ショット写真。 見るだけで頬が緩んでしまう。 最後にもう一度、涼香ちゃんを目に焼き付けようと振り返ると、すぐ後ろで俺に手を伸ばす彼と目があった。 「あ、えと……」 ぱっと手を引っ込めて、視線を彷徨わせる涼香ちゃん。 「どうしたの?」 「……あと10分くらいでシフト終わるから、そしたら2人で……その」 「え、2人で?」 恥じらいながら、こくんと頷く涼香ちゃん。 「もちろん、よろこんで! めっちゃ嬉しい!」 まさかの涼香ちゃんからのお誘い。 嬉しくて嬉しくて、上の空のまま教室の前で待った。 待つこと十数分。 なんとメイド服のまま、涼香ちゃんはやってきた。 待機列のお客さんや行き交う生徒の視線が一気に彼に集まる。 「着替えなくて、平気?」 「あぁ。あとで、また入ってくれてって言われたから……いいから、行こう」 涼香ちゃん目当てで来ているであろうお客さん達を差し置いて、こんなかわいい姿の彼を独占しちゃうなんて……。 そんな幸せ、いいのだろうか。 先を歩き出す彼の後を追いながら、浮かれる気持ちを抑えきれなかった。 ドキドキして何も集中できない。 緊張してろくに話もできないまま、昼時なのもあり、とりあえず屋台のある外に出た。 「なにか食べる?」 「そうだな……」 「たこ焼き一緒に食べない? 買ってくるから待ってて」 注文しながらなんとか気持ちを落ち着かせた。 せっかく2人で回れるのだから、楽しまないと。 気合を入れ直し、できたてのたこ焼きを手に戻る。 すると、涼香ちゃんに若い男性が声を掛けているのが見えた。 「いいじゃん、連絡先だけでもさ」 気丈に無視している涼香ちゃんの顔を覗き込み、絡み続ける男。 明らかにナンパだ。 それもかなりしつこい。 咄嗟に歩き出し、涼香ちゃんに触れようとする手を掴む。 「やめろよ」 むっとした表情で見てくる男を睨み返す。 「んだよ、俺が先に……」 「涼香ちゃん行こ」 聞く耳を持たなそうな男を無視して、涼香ちゃんの手を取って歩き出した。 「ごめん、一人にしちゃって」 「いや……あの男がしつこくて。悪い……助かった」 「うんっ」 休憩スペースに向かい、2人で出来立てのたこ焼きを食べた。 味も確かに美味かったけれど、涼香ちゃんと2人で食べられたことが最高に幸せだった。 のんびりと校内の展示を回って、江のクラスの脱出ゲームなんかもした。 涼香ちゃんは、難しい謎解きも少し考えて答えてしまう。 少し苦戦した問題も2人で答えを探し当て、なんとか脱出することができた。 どこにいても目立ち、人目を引く彼に教室がざわついたりもして。 本人は居心地が悪そうだったが、俺としてはそんな彼と一緒に歩いているのが嬉しかった。 自由時間のぎりぎりまで涼香ちゃんは俺といてくれた。 最後に入った美術部の展示も思ったよりも人が出入りしていた。 というのも、黒板アートが写真スポットになっているようで、若い女性が連れ立ってきてはカメラに収めていた。 大きな翼の生えた天使達が、黒板の上に白のチョークで描かれていてかなり美しい。 「涼香ちゃん」 絵に見入っている彼を呼ぶと、何気なく振り返り俺を見る。 そんな彼の姿を俺はスマホで写真に撮った。 天使の前に立つと、まるで涼香ちゃんに翼が生えているようだ。 「お、おい」 すぐ恥ずかしそうにする涼香ちゃんに微笑みかけ、のんびりと美術部員の力作を眺めていった。 先に入っていたお客さんが教室を出ていき、2人きりになる。 「それにしても、どうして2人で?」 ずっと疑問だったことを口にしてみる。 「それは、その……なんでも良いだろ、別に」 涼香ちゃんは困ったように視線を彷徨わせる。 「うん、なんであれすっげぇうれしい。幸せ感じちゃってる。涼香ちゃんを独り占めできるなんてさ」 ただ話せるだけでも、そばにいられるだけでも嬉しいのに。 こんな風に、涼香ちゃんの方から誘ってくれて一緒に展示を見て回ってくれて――これ以上に嬉しいことはないってくらい浮かれてしまっている。 「その、龍太郎……」 涼香ちゃんに名前を呼ばれ、彼の目を見つめた。 なにか言おうとして口をつぐんでしまう彼の言葉を、少しだけドキドキしながら待った。 けれどぎゅっと眉間にしわを寄せて涼香ちゃんは目を伏せた。 「いや、なんでもない。……もう、戻らないと」 「そう……そっか。あーあ、もうデートも終わりかぁ、寂しいな。ね、あとでライブ、絶対見に来てね!」 「あぁ、うん」 「……ほんとは緊張して逃げ出したいくらいなんだけどさ、涼香ちゃんのお陰で頑張れそうな気がしてきたよ」 「おおげさだ」 「そんなことないよ」 充実しまくりの文化祭もあと少し。 締めのライブには大勢お客さんが集まるだろう。 さすがの俺でも、昨日の夜から神経が高ぶって寝付けなかったくらいだ。 けど、こうして涼香ちゃんと一緒に文化祭を巡れてだいぶ気分もほぐれた。 せっかくならここ1ヶ月頑張った成果を出し切りたいと思えた。 「ありがとう、涼香ちゃん」 それに彼に恥ずかしいとこは見せられないよね。

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