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告白3《涼香》
蒸し暑い体育館での終業式が終わった。
流石に人混みに紛れていると視線も気にならなくなる。
何事もなくHRも終わり、一気に教室が賑やかになった。
みんなこれから始まる夏休みに浮き足立っているようだ。
少なからず俺も楽しみだった。
学校が無くて気楽なのもそう。
気になってる新刊や映画の公開もある。
それに加え、きっとまた彼らと遊びに出かける機会もあるかもしれない。
口約束だけど、二人で出掛けようなんて約束も――。
「ちょっとこっち」
荷物を整理しながらぼんやりと考え事にふけっていると、急に手を引かれた。
「お、おい!」
見ると強引に手を引いているのは、龍太郎の幼馴染の女子だった。
すでに廊下に出て帰っていく生徒の間をすり抜けて、階段を駆け上っていく。
後ろからは藤川まで付いてきていて、背中を押された。
「なんなんだよ……」
3階の更に上、屋上へ続く階段の踊り場まで連れてこられた。
「涼香くん」
龍太郎の幼馴染は、腕を組んで真剣な表情で俺を見上げた。
「噂、めっちゃ広がってるけどさ、実際龍太郎のことどう思ってるの?」
「どうって……別に」
急な話に曖昧な返事を返すと、彼女は明らかにむっとした顔をする。
「龍太郎が、涼香くんのこと本気で好きなの知ってるよね? その気じゃ無いなら、思わせぶりなことするのずるいよ。酷いよ」
はっきりとした言葉に何も言い返せない。
「……キスだってしたくせに!!」
「き、キスって……お前」
人のいない教室を選んでいたとはいえ、廊下側の窓ガラスから覗けるわけで。
もしかしたら本当に、あの時、見られていたのだろうか。
だとしたら、言い訳なんてできない。
思わせぶりにしているつもりなんて無かったが、キスしているのは事実だ。
それでもどうにか誤魔化そうと頭を働かせるが、うまく言葉がみつからなかった。
「私見ちゃったもん……龍太郎の部屋で二人きりでいちゃいちゃしてたでしょ?」
「あ……」
そういえばそんなこともあったと思い出す。
「いや、あの時は別に……」
しそうになっただけで、キスしてしまったわけじゃない。
そうだと自分に言い聞かせるが、きっと彼女が入ってこなかったらあの時も……。
「もし好きなら応援するよ? けど、龍太郎がこれ以上期待して、それで傷つけられるのは見てらんない」
そんな事言われても、勝手に好かれているだけだと、勝手に彼が傷付くだけだと、そう割り切れたらどんなに楽だろう。
確かにそうだ、あいつが俺のことを好きだと知っていながら中途半端な態度を続けてしまっている。
真剣に俺を思ってくれていると知っているのに。
俺は……。
「あ、こんなとこにいたのか!」
真剣な空気を切り裂くように、薫が階段を駆け上ってやってきた。
「杏、カラオケ行くんだろ? 早く行こう……って、なにしてたんだ?」
「今大事な話をしてるから」
「って、あー! 涼香くんまって!」
薫が来た隙に、彼女たちの間をすり抜けて階段を降りた。
混乱する頭を落ち着けたくて一気に駆け下りていった。
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