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第2話

ヘーゼル国は、年間を通して気候は穏やかで過ごしやすく、ゴージャスなリゾート地と呼ばれ、多くのセレブと呼ばれる人々がバケーションで訪れている。更には、地下な資源が豊富で高い経済水準を誇り、国民の教育費・医療費は無料である。 こーんな住みやすさ満点な国であるから、国民は皆「ビバ!ヘーゼル国!ありがとう!」と口々に言い合い、恩恵を受けているという実感があるようだ。 恋多き国王についても世間は寛容である。 あっちこっちと忙しく恋人を作り、結婚離婚を繰り返していても、「よっ!色男!」くらいの掛け声が上がるだけで、けしからん、軽い男、などといったマイナスな言葉を世間から聞くことはない。 王宮の中に若干、王政権の反対派はいるようであるが、世間の皆さんからは、非常に人気が高い国王である。 王は、自分が恋愛体質と自覚があるからなのか、色恋や結婚については前のめりになるくらい積極的に法案を提出し、数年前には同性婚も国として成立させたほどであった。 「同性異性など関係なく、好きになった人、愛する人が出来たら、結婚という契約をしようではないか。暮らしを豊かにするために結婚という仕組みを利用して欲しい。それは同性婚も同じこと。特定のパートナーと今後の人生を共にし、家庭をつくっていくことは、楽しみでもあり、人として美しく素晴らしい選択だ」 という色男なメッセージを当時残している。 その国王が、恋人たちが浮かれるこの季節に倒れたというニュースはセンセーショナルであり、いまだ集中治療室にいるということに、多くの国民が連日心配する声も大きくなっていった。 本日の議会は、もうあと少しで終了となる。この後ランチを挟み、午後には書類の整理をし、今日のコウの業務はそれで終了となる。 あとちょっとで終わろうとする議会中、コウは「くわぁ」と、大きな欠伸が出そうになり、無理矢理嚙み殺していた。 「国王陛下のご容態はいかがでしょうか」 議会終了間際、雑談交じりの会話の中で、国王の話へとなる。皆口々に「心配だ」「これからどうする」など、それぞれが呟き始めた。 「まだ面会謝絶ですか。本当に心配です。ご快復をお祈り申し上げます」 と、神妙な顔を作り、国王の姉の夫が口にした。 その男は、王より年配者であるが、声に張りがあり、背筋もシャキッとしている。 王から主導権は奪えないが、もしかしたら国王不在の今、その座を狙っている人なのかもしれない。 《おじちゃん...心にもないこと言ってる》 《まあ、社交辞令だな》 《だよな。この人、王政権の反対派だろ?》 《反対派ってことはない》 《えーー、反対派だって。そんな顔してんじゃん。ブスっとしてさ》 《ブスっとしてるのは、王子のお前がここにいるのが気に入らないからかもな》 《おい!ハッキリ言うなよ。傷つくぞ!》 現在、皆が真剣な顔で王の容体を心配しているが、二人はテレパシー全開で、脳内で会話中である。 コウは少し俯き「ご心配いただきまして、ありがとうございます」など、神妙な顔で親族代表の言葉を口にするも、頭の中ではテレパシーを使い、マリカとまだ全開でお喋りを繰り広げていた。 こんな時、テレパシーは便利である。 《なーに言ってんだよっ!》 とか、 《マジかっ!》 などのツッコミも入れ放題だ。 言いたいこと、思ったことをマリカ相手にその場で言えるのはスカっとする。 「それはそうと...コウ様、どうですか。議会など多いですが慣れましたか?」 テレパシー全開会話中、矛先は、くるりとコウの方へと向かってきた。 「ええ、おかげさまで…」と、コウはニッコリと笑い頷く。 小さい頃からの王宮教育で培った王子スマイルが、こんな時本当に役に立つ。王子としての優雅な所作や振る舞いに定評があるのは唯一の自慢だ。内心焦ってはいるが、立ち振る舞いは優雅に見えてるはずだ。 《うげぇぇぇーー。こっちに向かってきた!ヤダなぁ、また嫌味言われる気がするぅ。おじちゃんやめて!いじめないで》 ニッコリ王子スマイルを炸裂させながらも、コウの脳内、テレパシーでは、ぎゃあぎゃあと叫んでいた。 《大丈夫だろ。見ろよ、おっさん。無意識に顎を触ってるだろ?リラックスして社交辞令で言ってるだけだ。嫌味を言うつもりじゃないだろう》 《だーったらほっといてくれればいいのに!むーー、何て答えれば…》 《じゃあ、こう言えよ、》 マリカに、王子としての満点の返しをアシストしてもらう。 「もちろんまだまだ不慣れではありますが、一日でも早く皆様の力になれるように精進いたします。ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします」 ほぅ...と、各箇所で声が上がった。 国王の姉の夫も、無意識に顎を触り続けている。 マリカの言う通りにするとスムーズに事が進む。 国王の姉の夫は、なんてことない社交辞令を口にしたが、思いがけず満点の回答が返ってきたなと思っているようであった。 《よかった。ナイスぅ~マリカ!》 コウはテレパシーを使い脳内で呟き、ニッコリと王子スマイルを発動させ、ゆっくり頷いた。 マリカはムカつく男ではあるが、こんな時は非常に頼もしいと感じる。 コウが返答に詰まり、焦ったり、テンパったりした時でも、テレパシーで適格な指示を出してくれる。 また、脳内でコウがぎゃあぎゃあ叫んでいても、マリカはさほど気にしていないようだ。それどころか面白がって《だよな》《こいつ腹黒...》とか、一緒にツッコミを入れてくれることもある。 議会では、コウに対して回答を求められることも多いため、マリカのアシストにより、ズバッとするどい切り替えしすることも出来ていた。マリカからの受け答えは非常に助かっている。

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